2012.08.16 Thursday

マウリッツハイス美術館展@都美

東京都美術館で開催中の「マウリッツハイス美術館展」に行ってきた。フェルメール《真珠の耳飾りの少女》が12年ぶりに来日して連日の大混雑だというので、比較的空いている夕方を狙って。
この展覧会は東京都美術館の改修後、最初の企画展。 
マウリッツハイス美術館展
はじめに断っておくと、この展覧会に出かけた目的は《真珠の耳飾りの少女》のみで、その他の作品には期待していなかったし、実際、それ以外はほとんど趣味に合わなかった。
17世紀オランダ・フランドル絵画を成す肖像画、風俗画、静物画のどれも苦手なのだ。

フェルメール_真珠の耳飾りの少女
ヨハネス・フェルメール《真珠の耳飾りの少女》
この作品の来日は12年ぶりとかで、その間にフェルメール人気が格段に高まり、誰もが知っている絵になった。
《青いターバンの少女》ともいわれるほど印象的なラピスラズリの青、それに金色が黒い背景に映え、真珠の耳飾りや唇のハイライトがさらに魅力を高める。フェルメールらしい静かな佇まいの作品だが、おそらくこの作品の最大の魅力は異国風の衣装に身を包んだ少女の眼差しだろう。彼女が見える位置のどこへも彼女の強い眼差しは届く。ふとした一瞬の表情なのかもしれないし、何かを訴えているのかもしれない、そんな謎をたたえた眼差しだ。少し開き気味の瑞々しい唇も何かを語っているよう。
小さな絵に凝縮された絵の魅力。近くでじっくり観ることはかなわなかったので、堪能したと言えるかどうかは心許ないが、遠目から彼女の眼差しを受けて満足だった。

レンブラント_シメオンの賛歌
レンブラント・ファン・レイン《シメオンの賛歌》
光の魔術師レンブラントらしい明暗のくっきりとした作品で、光のあたった場面は美しく、劇的な効果をあげている。

ルーベンス_聖母被昇天_下絵
ペーテル・パウル・ルーベンス《聖母被昇天(下絵)》
アントワープのノートルダム大聖堂にある祭壇画の下絵。下絵というのもはばかられる完成度に脱帽。フランダースの犬のネロ少年もこれを観たのだ。
こんな小さな絵では、ルーブル美術館で巨大な絵画連作を観た身にはやや物足りなくて、またルーブルに行きたくなる。

新しくなった美術館でフェルメールの代表作を観る。ささやかなしあわせを感じるひとときだった。

2012.07.22 Sunday

ドビュッシー、音楽と美術@ブリヂストン美術館

ブリヂストン美術館で開かれている「ドビュッシー、音楽と美術 ―印象派と象徴派のあいだで」をみてきた。これも先週の話。

ドビュッシー、音楽と美術

ドビュッシー生誕150年を記念してオルセー美術館オランジュリー美術館とブリヂストン美術館が共同開催する展覧会。
会場に入るといきなりの青い世界。細かなところまで丁寧に青に染まっていて、相当気合が入っている印象。ドビュッシーとその音楽を、印象主義や象徴主義、ジャポニズムとのかかわりや交流から紐解くこころみはわくわくする感じがあってとても楽しかった。

ドビュッシーの音楽で好みは、「ベルガマスク組曲」「子供の領分」などの、美しくきらびやかな音のピアノ曲。よく聴いています。「交響詩 海」は聴いていた時期はあるが、「牧神の午後への前奏曲」なんかと同じで今はあまり聴かない。なので、印象派とか言われても正直ピンとこない。イメージとしては象徴派のほうが近い気がする(根拠なし)。

ドビュッシーの音楽にはドニの淡くて装飾的な絵が抜群に似合うように思ったが、まあそれは自分がドニが好きなだけかもしれないので、なんとも言えないか。とにかく僕にとっては、まさにドニ祭で、大大大満足であった。
ドニ_木々の下の人の列 ドニ_ミューズたち 
モーリス・ドニ《木々の下の人の行列(緑の木々)》《ミューズたち》
この2点とは「オルセー美術館展2010」以来の再会。
ドニ_イヴォンヌ・ルロールの3つの肖像
モーリス・ドニ《イヴォンヌ・ルロールの3つの肖像》
この不思議な肖像画や、《木の葉に埋もれたはしご》は、ドニらしいおもしろい発想の構成でとても魅力的だった。ドニの作品は色の統一感があるので、たとえば、「ほら、ドニのあの青い絵」とかでわかったりしてしまうあたりが便利。

ウィンスロー・ホーマー《夏の夜》も幻想的できらきらと美しかったし、大好きな象徴主義の作品もたくさんあって、どれもドビュッシーの音楽に関係しているような気がしてきて不思議な気分になった。


ドビュッシーはもちろん、彼が活躍した時代のフランスを中心とする美術に関心があるなら見逃せない充実の企画。ドニ好きならなおさら。
三菱一号館美術館で開かれているバーン=ジョーンズ展とあわせて見るとさらに価値があるかも。
バーン=ジョーンズ_王女サブラ
エドワード・バーン=ジョーンズ《王女サブラ》

2012.07.21 Saturday

吉川霊華展@東近美

東京国立近代美術館で開かれている「吉川霊華展 近代にうまれた線の探究者」をみてきた。といっても一週間前のこと。

吉川霊華展 吉川霊華展2
吉川霊華という名をこの展覧会までまったく知らなかったが、線描を探究していたと聞いて、ぜひ線をみなければと出かけたわけだけど、想像していた線のタイプとは全然違っていた。強弱などを駆使した端正な線を勝手に想像していたが、その線は、迷いなくスピーディーだけども、やわらかで繊細さがあふれんばかり。
吉川霊華があまり知られていないのは、帝展なんかと距離を置いていたことや、個人蔵が多いことなどがあるらしい。作品には、そうした孤高の存在みたいな雰囲気が漂っている。

展示は、いきなりの巨大な水墨画《神龍》でびっくり。上のほうは暗くてよくみえなかったけど。その後、初期の作品が続くのだけど、同じモチーフが後半にも登場したりするので、よく目に焼き付けておくと楽しみが倍増すること間違いなし。
古典を題材にすることで線に磨きをかけたいという欲求につつまれたのかな、などと思いながらみていき、圧巻のスケッチ帳のすごみにまた驚かされる。

不思議なことに、ひとつひとつの作品を眺めていくうちに、強烈な眠気に襲われ、ガラスケースの前で立ったまま寝てしまいそうになった。観覧者が少なくて静かすぎたせいもあるかもしれないが、なにか、ひとつひとつの作品にこめられた世界に魔力が働いているような気がした。あと、あまり色のない、わりと似た雰囲気の作品が続くということもあるような。

個人的にもそんなに好きなタイプの絵ではなかったが、そこには独特の世界観があって、惹きつけられたのもたしか。なかでも幻の代表作《離騒》の詩的でエモーショナルな情景には思わず見入ってしまった(最初に眠気に襲われたのはこの対幅の前だった)。
 吉川霊華_離騒_右
吉川霊華《離騒》

自分の場合、よくある感想だけど、まだまだ知らない作家がたくさんいるなー。時間と気持ちに余裕をもって、もっとたくさんの絵を見に行けたらいいんだけど。それはさておき、久しぶりの東近美はとても楽しかったが、常設展を回る時間がなかったのが残念だった。




2012.07.06 Friday

バーン=ジョーンズ展@三菱一号館美術館

三菱一号館美術館で開かれている「バーン=ジョーンズ展―装飾と象徴」をみた。
バーン=ジョーンズ展@三菱一号館美術館
2012.6.23 Sat-8.19 Sun

ラファエル前派の中心的存在として、「装飾性と象徴性をあわせもつ独自の様式を確立」し、「唯美主義運動を推し進め、象徴主義絵画の先駆けとなった」エドワード・バーン=ジョーンズが描いたのは物語や神話の世界。この展覧会はバーン=ジョーンズの日本初の個展だとか。(「」内は展覧会HPより引用)
好きな要素しかない、つまり好みのどまんなかなのだから、これを観ずして何をみる!

この展覧会の特徴は、物語・神話・聖書の世界がテーマ、エピソードごとの展示にされていることだ。例えば、「聖ゲオルギウス」「クピドとプシュケ」「ピグマリオン」「ペルセウス」「いばら姫」。この方法は、バーン=ジョーンズの関心のあり様やそこに込めた様々なものを捉えるのに適しているような気がして、すっと心におさまってくる。というより、終わってみれば、これ以外の構成はなかったなと思う。加えて、いくつもの習作や下絵も、その後の本画に至る過程をで作家が何を描きたかったのかを理解する貴重な手がかりとなっていた。

連作「ペルセウス」の解説に、「この連作は、主題の性質も相まってこの画家の作品としては破格のドラマ性を有しているが、それでも当時の批評では、描写の迫真性に対する装飾性や審美性の優位というバーン=ジョーンズ芸術の本質が指摘されている。」とあるように、神話や物語の世界をどう描くかというところに、特徴があらわれる。
ダイナミックに迫力ある画面にしようとするなら、例えば、まさに画面からはみ出るような構成という方法もあるが、バーン=ジョーンズの場合は、奇抜な構図もなく、どの作品もきっちりと画面に収まっている。これが物語のとくに装飾性を高めているのだろう。
バーン=ジョーンズ_果たされた運命
《果たされた運命:大海蛇を退治するペルセウス》連作「ペルセウス」

バーン=ジョーンズは「眠り姫」の主題をなんども連作にしている。しかし作家は王子の口づけによって眠り姫が目を覚ますシーンは描いていないとか。バーン=ジョーンズは永遠性あるいは処女性の象徴をそこに見ていたのか、それとも目覚めることで直面する現実を封じ込めたかったのか。
バーン=ジョーンズ_眠り姫
《眠り姫》連作「いばら姫」(ダブリン市立ヒュー・レイン美術館)
第3の連作と目されるうちの《眠り姫》。全体が緑色に包まれ、主題と相まってとてもとても静か。
ここまで乙女ならずとも夢見心地で歩いてきて、突然この作品に出会う。この構成も心憎い。ああおれはこの作品をみるために今日ここにやってきたんだ、と気づく、何よりの感激。ほかの《眠り姫》の実物をみたことはない。しかしこの色の統一感がもっとも美しいと感じる瞬間だった。


以前、この美術館の木の床に靴音がコツコツと響くのがうるさいと感じていたのが嘘のように、その音が心地よかった。もちろんうるさい歩き方の人もいるが、だいたいの人は控えめにリズムを刻んでいるし、自分も慣れてきたこともあるだろうし、何よりも、バーン=ジョーンズの幻想的で美しい芸術と共鳴しているように思えた。

バーン=ジョーンズ展の図録はとてもおしゃれ。おすすめです。
バーン=ジョーンズ展カタログ



2012.06.03 Sunday

福田平八郎と日本画モダン(前期)@山種美

山種美術館で始まった【特別展】生誕120年「福田平八郎と日本画モダン」(前期)をみてきた。

福田平八郎と日本画モダン
福田平八郎の形と色面による画面構成はとても魅力的。楽しみにしていた展覧会。
夕方、到着してみると、とても空いていて快適にみることができた。混む時間帯は去っていたのかもしれないけれど、それにしてもちょっと少なくて寂しい気もした。

福田平八郎《筍》
何度みても惚れ惚れする。ずっしりと存在感のある黒い筍がふたつ、白描のあっさりとした落葉に覆われた地面。この絶妙の構成にうっとり。淡い色づかいながら目に眩しいほど豊かな色彩。これをみると、カラリストと云われる所以はこういった、色への繊細な感性にあるんだろうなと感じる。
福田平八郎_筍

福田平八郎《彩秋》
さまざまな色が合わさって柿の葉が色づくさまを鮮かに描き出した美しさ。あっさりしたすすきが彩りとは対照的に秋の風味を添えている。《筍》とはまた違った意味でカラリスト平八郎の魅力がある。
福田平八郎_彩秋

個人的には、《漣》に始まる40代以降の作品に好きなものが多い。デザイン画風でもあり、展覧会タイトルにも使われているモダンさがあって、心が晴れやかになるから。

福田平八郎以外の日本画モダンとして紹介されている作品のなかでは、徳岡神泉《芋図》が以前からとてもみたいと思っていた作品。シンプルすぎるほどの背景に深い味わいのある葉が真ん中の線に並んでいて神泉らしい。
徳岡神泉_芋図
徳岡神泉展もやってほしい。

ほかにもいろいろあって、日本画モダンという造語のくくりでいうと、こういう感じになるのか、と。
展覧会図録は、いつも手元に置いておきたいようなきれいな装丁。こういう小さくてお手頃価格の図録は非常にありがたいです。

ところで、この展覧会でいちばん楽しみにしている福田平八郎《雨》は後期展示。必ず後期も行きますよー!

【補足】
この日、「日本画モダン」を名付けた山下裕二氏の講演会がこの後あったので、みなさんそれに合わせて出かけたから空いていたのかな? 自分は用事があって、その時間までとどまることはできませんでしたが。



2012.05.13 Sunday

桜・さくら・SAKURA 2012@山種美

山種美術館「桜・さくら・SAKURA 2012−美術館でお花見!−」をみた。もう会期末が近いからかチラシなし。

実は恵比寿に行く用があったついでに、少し足を延ばしてみたのだけど、相変わらず盛況でなにより。日本人は絵の桜も大好きなんだなと思う。自分は桜の絵がとくに好きというわけではなくて、どちらかというと、桜の木一本が寂しく描かれたようなのが好み。

そういうわけで、小林古径「清姫」のうち《入相桜》速水御舟《夜桜》稗田一穂《朧春》、あと奥村土牛《醍醐》《吉野》あたりが気になる。
日本の湿った空気感のようなものが画面に濃厚に漂っている奥村土牛の穏やかな作品に対して、小林古径、速水御舟の、空気が冷たく切れ味するどい画風。同じ桜でもまったく違うものがみられるのでおもしろい。

過去に千鳥ヶ淵で観た山種の桜展の記事を見返してみると、自分の趣味って全然変わってないというのがわかる。なので、過去記事へのリンクだけ貼って、お茶を濁そう。


あと、川合玉堂の作品5点がよかった。この味わいはほかの画家にはなかなかみられない。
とりあえず、記録だけ。

2012.05.12 Saturday

レオナルド・ダ・ヴィンチ美の理想@Bunkamura ザ・ミュージアム

Bunkamura ザ・ミュージアム「レオナルド・ダ・ヴィンチ美の理想」

レオナルド・ダ・ヴィンチ美の理想
レオナルド・ダ・ヴィンチ作品と彼に直接間接に影響を受けた作品からレオナルドの”美の系譜”をたどるユニークな展覧会。
レオナルドの真筆は当然ながら少ないが、さて、他の作品でどうみせるか、というところが見所だろう。
ーなんて思いながら開場に足を踏み入れると、そこはなんだかルネサンスな雰囲気。そして、いきなり、高い技量で美しく描かれた聖母子像たちが登場してすっかりこの世界に没入。早くも負けを認める(負けってなんだ?)。

なかでも目が吸い付けられてしまったのがこれ。
ボッカッチーノ_ロマの少女
ボッカッチョ・ボッカッチーノ《ロマの少女》
色の組み合わせ方のせいなのか、まるで3Dのようでまずびっくり。そして、憂いをたたえたようでいて意志の強さを覗かせている目。目は口ほどにものを言い。しかし美しい。

レオナルド・ダ・ヴィンチ_ほつれ髪の女
レオナルド・ダ・ヴィンチ《ほつれ髪の女》
展覧会の顔としてチラシその他で露出しているレオナルドの作品がこれだったので、セピア色のこの作品が目玉というのでは物足りない気がしていたが、とんでもない。
素描のようでありながら、顔の造形は完璧に美しく、あっさりと描いたようでいて顔を彩る髪の毛。なにより独特の静謐さを湛えた美しい作品で、レオナルドの傑作と評価する声があるのも納得。

《アイルワースのモナ・リザ》
レオナルドの未完成作との説もある、若かりしモナ・リザ。いろいろな形で模写されたりアレンジされたりしているモナ・リザがいくつも並んでいるなかで、このモナ・リザはレオナルドの本家モナ・リザに似た雰囲気を持っていて、顔立ちも変な癖がなくてきれい。レオナルド作とされても違和感がないくらいの出色の出来だと思うので、誰が描いたにしろ、いいものはいい。世界初公開だとか。

レオナルド・ダ・ヴィンチと弟子_岩窟の聖母
レオナルド・ダ・ヴィンチと弟子《岩窟の聖母》
ルーブル美術館とロンドン・ナショナル・ギャラリーにもある《岩窟の聖母》。こちらは個人蔵なのでなかなかみる機会がなく貴重。アングルがレオナルドの筆によるものと考えていたそうだ。

レオナルド作品が少ないからといって甘くみてはいけない。そもそも現存する作品数が少ないのだから仕方ないし、レオナルド作品とともに周辺の作品をいっしょにみることで、レオナルド・ダ・ヴィンチのすごさと魅力、それに美への探究心を堪能できるよう工夫されている。
気楽な気持ちで出かけたのに、いっぺんに目が醒めるような充実の展覧会で、個人的にはとても気に入った。
なんとくなく迷っている方がいるなら、騙されたと思って、ぜひお出かけください。責任はもてませんが、おすすめします。


2012.04.29 Sunday

あなたに見せたい絵があります。@ブリヂストン美

ブリヂストン美術館開館60周年記念特別展「あなたに見せたい絵があります。」に行ってきた。

 
あなたに見せたい絵があります。展会期前日の内覧会にせっかく誘っていただいたのに残業で行けなかった展覧会。しっかり入館料をおさめて観てきました。
今年1月に開館60周年を迎えたとのことで、ここと石橋美術館が所蔵する代表的な作品約100点が集められている。もちろんほかにもたくさんいい作品あるので、絞るのは大変だったことでしょう。

自画像、肖像画、ヌード、モデル、レジャー、物語、山、川、海、静物、現代美術の11章からなり、単純なテーマ分けのようだけど、意外にすっきりとわかりやすくてよかった。
まだ行ったことがない石橋美術館の所蔵に多く初見作品があって、予想以上に楽しめたし、見慣れた作品たちも、まわりにある作品との配置の関係でまた違ってみえてくるのだからおもしろい。ひとつひとつに丁寧な解説があって親切。

「第6章 物語」には物語を題材にした作品9点があって、うち青木繁が4点。青木繁《わだつみのいろこの宮》の正面に、その5年前に制作された藤島武二《天平の面影》が展示されていて、個性は違っても、古代のロマンに心をはせる画家たちの情熱のようなものが感じられて興味深い。
青木繁_わだつみのいろこの宮 藤島武二_天平の面影

「第7章 山」には雪舟《四季山水図》。理想とする山水図だからとはいえ、なんてきれいな構成だろう。春夏秋冬並べてみると、完璧なバランスのなかに風景が情感をたたえている。それぞれに人がいるのがほほえましい。
雪舟_四季山水図_春夏 雪舟_四季山水図_秋冬
雪舟《四季山水図》 右から春夏秋冬

新収蔵作品2点もお披露目されている。ギュスターヴ・カイユボット《ピアノを弾く若い男》と岡鹿之助《セーヌ河畔》
カイユボット_ピアノを弾く若い男
カイユボット《ピアノを弾く若い男》
光や写り込み、壁や絨毯、窓など隅々まで神経を配って丁寧に描きこまれた、画家の心豊さが伝わってくるような気持ちのいい作品。

ブリヂストン美術館と石橋美術館が自信を持って見せたい絵の数々。堪能しました。

2012.04.21 Saturday

KORIN展@根津美

根津美術館で特別展「KORIN展「 国宝燕子花図」とメトロポリタン美術館所蔵「八橋図」」をみた。

KORIN展尾形光琳が十数年の時を隔てて、同じ『伊勢物語』九段にちなんで描いたふたつの金屏風の、およそ100年ぶりの再開の場に居合わすことができた。きっと自分にとっては最初で最後のことになるだろうから、しっかりと目に焼き付けなければと、ほとんどの時間を屏風の前で過ごした。

尾形光琳《燕子花図屏風》《八橋図屏風》を並べて観比べてみると、想像していたよりもかなり違いを感じる。
燕子花の配置に徹底的にリズムを感じる燕子花図に対して、抽象的な橋で画面を分けて、より構成的に仕上げている八橋図。花も、ぼってりとふくよかでデザイン的な前者に比べて、後者ではより花の形が自然に描かれている。

《燕子花図屏風》には、リズミカルな魅力があるものの、花への色の置き方なんかはどうなんだろう、というふうに感じていたこともあった。今回、この2点を同時にみると、画面の構成だけで官能的ともいえるリズム感を出している燕子花図のすばらしさに、あらためて気づく。
印刷されたもので比べていたときには、橋の存在がゆえに画面に一本芯を通したような力強さを八橋図に感じていたのに、実際にみると、構成しすぎでややうるさい印象をもったのだから不思議だ。色も違う。渋めの燕子花図と明るめの八橋図。

自分は文句なしに燕子花図屏風のほうが好きだと確信できた。みなさんの感想はどうだろうか。

光琳のほかには、弟子の鈴木其一を思わせる色鮮やかさが魅力的な酒井抱一《青楓朱楓図屏風》なども。

日本とアメリカに離れ離れに暮らしている金地の六曲一双屏風を一度にみることができる滅多にない機会。これを見逃すと後悔必至ですぞ。



2012.04.15 Sunday

アンリ・ル・シダネル展@東郷青児美

損保ジャパン東郷青児美術館「薔薇と光の画家 アンリ・ル・シダネル展―フランス ジェルブロワの風ー」をみた。

アンリ・ル・シダネル展アンリ・ル・シダネル。まったく知らない名前だった。
「19世紀末から20世紀前半に活躍したフランスの画家」で「印象主義や新印象主義の影響を受け、明るく透明感のある作品」を描いたという。
ポスターにはポスト印象派っぽい作品が使用されているが、この展覧会を実際に観ると、このチョイスは違うんじゃないかなと思う(ついでにいうと、チラシのほうは一部を拡大している意図がよくわからない)。

夕暮れから夜のおだやかな光や灯りを描いた作品がほとんどで、その意味では、「薔薇と光の画家」というのもどうかと思う。違ってはいないけど、言葉として<光>とくると、昼間の明るい陽射しを想像しがちだから。
ル・シダネルはとくに、日が暮れたばかりの家々や街頭にやわらかで暖かみのある光が灯っている光景が好きだったに違いない。
初期には人を描いたが、やがて画面から人の姿は消えていく。でもそこには、つねに人の営みや暖かみが感じられる。それがゆえにアンティミストと呼ばれたのだろう。

日が暮れたばかりの青みを帯びた街並に橙色の灯りがぽつぽつと優しく見える、そんな美しいひとときを観ていると、心が安らいでくる。同じように人のいない景色を描きながら、寂しさが漂うハンマースホイとは対照的だ。

ル・シダネル_運河
アンリ・ル・シダネル《運河》
ル・シダネル_コンコルド広場
アンリ・ル・シダネル《コンコルド広場》
ル・シダネル_離れ家
アンリ・ル・シダネル《離れ家》

いろんな街に出かけて、その街のきれいなひとときを発見したル・シダネル。
ひろしま美術館所蔵の《離れ家》など、国内の美術館からもいくつか出品されているので、知っている人もたくさんいるだろうけど、それほど有名ではない。こういう作家に光をあてる展覧会というのはとてもいいものだ。迷っているなら、ぜひ。


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