2017.01.23 Monday

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2013.09.22 Sunday

夏秋草図屏風@東博平成25年度秋の特別公開

東京国立博物館 平成25年度 秋の特別公開 9.18-9.29

東博H25年度秋の特別公開

秋の特別公開がやってきた。2週間限定公開なので、ぼやぼやしていていつも見逃してしまうので、今回は合格。

なかでも目当てはもちろん、こちら。
酒井抱一_夏秋草図屏風
酒井抱一《夏秋草図屏風》
約3年ぶりの再会だったので、うれしかった。
夏草図も秋草図もどちらもすばらしいのだが、今回、とくに風神の裏に描かれた、秋草が強い風に吹かれてしなっている様子、宙を舞う草の様子などを繊細な筆でみせている左隻の儚さに強く惹かれて、見入ってしまった。何度みても発見があり、何時間でもみていたくなる。
前回の出会いはこちら

酒井抱一_四季花鳥図巻02酒井抱一_四季花鳥図巻01酒井抱一_四季花鳥図巻03
酒井抱一《四季花鳥図巻》下巻
適当な写真で失礼。どこをとっても、頬が自然と緩むようなほっかりした感じがする意匠と魅力的な場面ばかり。横に流れるような仕掛けでみられたらどんなに楽しいだろう。

伝俵屋宗達_扇面散図屏風
伝俵屋宗達《扇面散図屏風》
季節のいろんな様子が描かれた扇面を絶妙の配置で散りばめている。扇面からはみ出しているモチーフの構図がどれも魅力的。

ほかにもたくさんすてきな作品があって、久しぶりに東博を堪能した。

そのあと、こちらの2階席でコーヒーとケーキをいただいて帰りました。
黒田記念館別館上島珈琲店
黒田記念館別館 上島珈琲店


2013.08.07 Wednesday

モネ、風景をみる眼@ポーラ美術館

ポーラ美術館 ✕ 国立西洋美術館 共同企画 「モネ、風景をみる眼 19世紀フランス風景画の革新」を箱根のポーラ美術館でみた。2013.7.13-11.24(西美での同展は2013.12.7-2014.3.9に開催)。
展覧会公式ホームページ

モネ、風景をみる眼
箱根に一泊旅行することに決めたとき、それなら一度も訪ねたことがないポーラ美術館に行こうということになった。たまたまこの企画展が開催されていたのだが、本音をいうと常設展がみたかった。そうそう行く機会があるわけではないから。

この展覧会は国内有数のモネ・コレクションで知られる両館が共同で企画したもので、ポーラ美術館にとってこれだけの規模の企画展は初めてで、西美にとっても私設美術館との共同企画も初めてだとか。同展は両館でそれぞれ開催されるが、同じ内容ではなく、それぞれの美術館の特徴を打ち出していくのだとか。
これはなかなか意義深いことだし、常設展示がみたかったなんてバチあたりなことを言ってはいけないかもしれないなー。

ポーラで所蔵作品のほとんどは初めて目にしたものだが、西美所蔵作品でも初めてみる作品がいくつかあって、ポーラ、西美ともに、持ってるなーという印象(いくつもの作品が箱根に出張している西美のモネ部屋は、いまどうなっているんだろう)。

モネ_バラ色のボート モネ_舟遊び
左:クロード・モネ《バラ色のボート》1890年 ポーラ美術館
右:クロード・モネ《舟遊び》1887年 国立西洋美術館
共同企画ということで、両館が所蔵する作品を並べて比較するなんてことが実現している。例えばこの、ボートに乗る少女を描いた作品2点。
ともに、モネがのちに再婚するアリス・オシュデの娘たちを描いたものだが、制作年代が左から右に移っているように感じたが、実は逆だということに驚く。

モネ_サン=ラザール駅の線路
クロード・モネ《サン=ラザール駅の線路》1877年 ポーラ美術館
この駅の風景もモネはよく描いている。影に色がついていくのをよく目にするだけに、煙の色が白いのが不思議な気がする。

モネの眼は観察の眼、印象・心象の眼が混ざり合ったモネだけの眼だ。
この展覧会には、モネだけでなく、同時期に活躍した作家たちの作品もたくさん出品されていて、印象派、象徴主義など、時代が動くなかでモネの位置、画風がどうなっていったか、という点もみどころのひとつ。
エドゥアール・マネ《花の中の子供(ジャック・オシュデ)》ピエール・ピュヴィ・ド・シャヴァンヌ《貧しき猟夫》などもお越しだし、それぞれに比較する絵があてがわれている。

作品リストを作っていないということなので、必要な方はメモをとり忘れないように(自分はまったくメモをとりませんでした。いつものことですが)。


レオナール・フジタ@ポーラ
あと、新収蔵作品となった藤田嗣治の3点が公開されていて、このうち《グロテスク》《シレーヌ》は世界初公開だそうだ。なんともいえない味わいの2点でありました。

ポーラ美術館

一度は行かなきゃと思っていたポーラ美術館をようやく訪ねることができて満足。ただ、常設展示がみられなかったので、宿題にしようと思う。それと芦ノ湖の海賊船に乗って近くまで行ったのに入らなかった成川美術館にも今度こそ行かないと。

2013.07.31 Wednesday

レオ・レオニ 絵本のしごと@Bunkamura ザ・ミュージアム

Bunkamura ザ・ミュージアム「レオ・レオニ 絵本のしごと」
2013.6.22-8.4
レオ・レオニ 絵本のしごと

「宗達を検証する」第二回講座の前にみておこうとチケットを購入して入場(並ばずに買えたけど、講座を終えて帰るころには、チケット売場に長い行列ができていて、おそれおののいた)。
入口付近に人がたまっていて、というよりは、壁沿いに蟻みたいな列をつくっていて、困った展開になっているなーと思いつつ、後ろからちょこっと覗きこみながらさっさと進む。すると隙間ができはじめていたので、わりと楽にみられる状態だった。

実はレオ・レオニという名はこの展覧会の予告ではじめて耳にした。
おはなしはどれも、教訓めいたいやみがなくて、おもしろそう。絵は、コラージュやら鉛筆、色鉛筆、水彩、油彩、クレヨンなどの技法を使いながら、シンプルな構図で描いた。さすが「色の魔術師」というだけあって、センスを感じさせるバランスのとれた美しい色使い。
そして魅力的、というか可愛らしいキャラクターが人気の理由なんだろう。とくにねずみがものすごくかわいい。自分は展示されていた作品のなかで絵という視点で『みどりのしっぽのねずみ』がいちばん気に入った。

たくさんの親子がいて、ひとりでみた自分はなんだか浮いているように感じた。とにかくすごく人気があるのはよくわかりました。ポストカードを買いたかったけども、混んでて断念。それでもまだ空いている時間帯だったことに後で気づくわけですが。
感想にもなんにもなっていないけど、いちおう記録だけ。 

2013.07.21 Sunday

和様の書@東博平成館

東京国立博物館平成館特別展示室 特別展「和様の書」2013.7.13-9.8

和様の書
絵をみるようになって、いろんなかたちで書に接する機会が増えたおかげで、書にも多少は関心をもつようになった。子供のころから習字がへただったので、書道をやってみようと思ったことはないけども(習字と書道を同列にしている時点でアウト!)

「和様の書」とは、中国からもたらされた書法を日本の文化の中で独自に発展させた、日本風の書のことです。平安時代中期以降に社会制度や文化の和風化が進むと、日本独自の仮名が生まれ、仮名と漢字が調和した「和様の書」が展開していきました。[展覧会チラシより]

どうやって感想を書こうかと思っていたところ、東博の展覧会詳細ページだけでなく1089ブログでもいろいろと解説しているので、そちらを参照すれば、もうそれでいいでしょ! 記事を書こうとすればまず誰もが触れたくなる内容が網羅されている。
和様の書の成立(10世紀頃)に貢献した三跡(小野道風、藤原佐理、藤原行成)の書、戦国時代の天下人(織田信長、豊臣秀吉、徳川家康)の自筆の書、四大手鑑(鑑定するための筆跡をアルバムにしたもの。なかみはもちろん、アルバムに自体も立派)、《平家納経》と、みどころ満載。出展作品約150点のうち約80点が国宝・重要文化財というのだから。
世界最古の自筆日記として世界記憶遺産に認定された藤原道長『御堂関白記』も認定後初公開。

和様の書は中国の書とくらべて、柔和で優美という。そのあたりを意識しながら、さらにひとりひとりの個性をみくらべ、人となりなんかを想像していくのが楽しい。
藤原行成_白氏詩巻(部分)
藤原行成《白氏詩巻》(部分)
1089ブログで「いわゆる和様の書の完成した姿」として取り上げられている。美しいです。こういう漢字にひらがなが交ざって調和している書の美しさといったら。
書だけでも美術品と思われるものもたくさんあったが、料紙もどんどんと多様になって、その調和によって美術品としかいいようのないものが登場する。だいたい書のほうはほとんど読めないのだから、美術品として眺めるしかないんですけどね。

展覧会は空いていたけど、これ、みのがしたらもったいない。和様の書の歴史を感じながら、お気に入りの美しい書をみつけてみよう。書をやりたくなるかも。
展示替えが、作品によってはけっこう頻繁にあるので、もしみたいものがあるなら、展覧会詳細ページでよくチェックしましょう。

2013.06.30 Sunday

ファインバーグ・コレクション展@江戸博

江戸東京博物館「ファインバーグ・コレクション展―江戸絵画の奇跡―」
2013.5.21―7.15
江戸絵画の奇跡

米国のファインバーグ夫妻が蒐集してきた江戸絵画を中心とする日本美術のコレクションから約90点が里帰り(これって重ね言葉かな)。
若いころにメトロポリタン美術館で目にした江戸絵画に感銘を受けてコレクションを始めたそうだが、自分の目を信じて蒐集しながら、さらに見る目を養っていったんだろうな、などと想像すると、まぶしい。

琳派
最初に目に飛び込んでくるのは俵屋宗達の掛け軸《虎図》。丸っこくてユーモラスな虎が半身だけ見せるという構図が抜群。よくみると細かな毛が無数描かれていて、毛並みの柔らかさを生み出している。
酒井抱一《十二ヶ月花鳥図》はほかにもいくつかあるが、どれも貫禄の出来。すべてが一堂に会する機会があればどんなにしあわせだろうと思う。
鈴木其一《群鶴図屏風》。其一らしい奔放なデザイン性が生み出すリズムがみごと。これは大琳派展でみたのと同じじゃないかなと思ったら、そうだった。あのときにも来日していたのか。
鈴木其一《山並図小襖》《松島図小襖》も大胆にデザイン化され雄大な広がりが感じられる。
鈴木守一《平経正弾琵琶図屏風》は背景がこげ茶になっているが、銀箔らしくて、これが銀色に光っていたらさぞかし魅力ある画面になっていただろうと思うと残念だ。

文人画
文人画、南画のたぐいはやや苦手にしているのだが、今回は、池大雅《孟嘉落帽・東坡戴笠図屏風》の迫力ある筆使いに感心したり。
谷文晁《秋夜名月図》の落款のでかさには驚いたが、枯れた感じの画面に赤い落款が存在感を誇示していて、うまく馴染んでいた。

四条円山派
円山応挙《鯉亀図風炉先屏風》は裏に絹を張ってそこに水紋を描いて合わせた珍しいもの。水紋が広がっていくようにみえた。
珍しいといえば、竹内栖鳳《死んだ鶴図》は西洋画によくある、狩った獲物を吊るしたりした光景を日本画で描いたもので、西洋画ほどグロテスクではなかった。

このほかにも、奇想派の枠で伊藤若冲、曾我蕭白、そして浮世絵と、幅広く集めたものだなと感心する。江戸絵画というくくりでいえば、多岐にわたって優品が揃っているので、かならず気に入る作品があると思う。

残念だったのはショップのポストカードのほとんどが大判だったこと。展覧会でいつも何枚かポストカードを買うけど、大判だとファイルに入れられないので、今回は断念した。

2013.06.29 Saturday

夏目漱石の美術世界展@芸大美術館

東京藝術大学大学美術館「夏目漱石の世界展 Natsume Soseki and Arts」
2013.5.14-7.7
夏目漱石の美術世界展
夏目漱石の文学作品や美術批評に登場する作品などを集めるという刺激的こころみ。
漱石が日本美術に親しむ環境にあったこと、英国留学でラファエル前派をはじめとするイギリスの美術に触れたこと、それを血肉にして文学作品に落とし込んでいったことがよくわかると同時に、漱石の目を通して美術作品に再会することができる、文学と美術の絡み合いが知的興奮を誘う。
夏目漱石の小説はいくつかしか読んだことがなく、しかも遠い昔のことなので、そこに美術作品がどれほど登場していたかなんてことは全然おぼえていない(恥ずかしいかぎり)。しかしこの展覧会は、猫の我輩が主人と美術のかかわりを解説してくれたり、美術作品について書かれた漱石作品の部分が示されていたりして、読んでいなくても十分に楽しめる親切な構成になっている。

そもそもこの展覧会に行こうと思ったのは、なんといっても、ウォーターハウスの2点が来ているからだ。
ウォーターハウス_シャロットの女
ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス《シャロットの女》リーズ市立美術館
塔のなかで鏡を通してしか外の世界を見ることが許されない呪いをかけられた女が、ランスロット卿を追おうと運命に抗って直接外の世界へと向かったとたん、足に織物の糸が巻きつき、鏡にひびが入る。アルフレッド・テニスンがアーサー王の物語をもとに描いた詩より。
ウォーターハウスはこの題材でほかに2点を描いている。
動きのある場面と表情には彼女の渇望感のような焦った気持ちが色濃くあらわれ、部屋のなかの様子からは、そこが退屈な日常が遅々と進んでいく、世間とは隔絶された世界であることが伝わってくる。彼女は画面のど真ん中にいて、いままさに手前へと消えていこうとしているのだが、この先にある運命は死なのだ。
短篇『薤露行』でこの絵が触れられている。

ウォーターハウス_人魚
ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス《人魚》王立美術院、ロンドン
人魚が歌を唄いながら髪を梳く姿を詠んだテニスンの詩より。『三四郎』に画集でこの絵と思われる絵を見る場面がある。
白磁のような艶っぽい肌とやわらかな金属のような質感のうろこ。波の音に交じって人魚のやや悲しげな歌声がところどころ聴こえてくる。情感豊かで心を揺さぶられる。

ほかに、ターナー《金枝》ミレイ《ロンドン塔幽閉の王子》ロセッティ《レディ・リリス》などがあって、西洋美術だけで十分に満足できるのに、日本美術のこんな重要作まで。

酒井抱一_月に秋草図屏風
酒井抱一《月に秋草図屏風》東京国立博物館寄託
《夏秋草図屏風》に並ぶ酒井抱一の最高傑作。『門』にこの屏風をモデルにしたとみられる屏風の描写がある。凡人からすると、この作品を小説に登場させて語ってしまうなんてことは、たいへんな挑戦だなと思ってしまう。さすが文豪。

夏目漱石の美術世界。やはり創作を生業とする漱石に似合うのは小説の文脈に巧みに紛れ込ませた美術作品だと思う。美術批評や漱石自筆の絵にはとくに感じるものはなかった。
漱石と美術に興味があればもちろん、漱石にしか興味がない、美術にしか興味がない、そのどちらでも十分に満足できる、展覧会ならではの空間を活かした濃密な展覧会だった。


2013.06.02 Sunday

オディロン・ルドン@損保ジャパン美

損保ジャパン東郷青児美術館「オディロン・ルドン 夢の起源」2013.4.20-6.23

ルドン展@損保美

ルドンの作品については、Bunkamura ザ・ミュージアム「ルドンの黒」展で初めてまとまった数を観て以来、ちょこちょこといろんなところで出会ってきた。そのほとんが岐阜県美術館所蔵作品なので、ちょっと見慣れてしまったかもしれない(同じタイトルの画材違いやバージョン違いのようなものを誤解しているところもあるかもしれない)。そのせいで、これはという作品がないと、物足りなさを感じるようになっている。
本展でも岐阜県美術館のコレクションが中心だが、生まれ故郷にあるボルドー美術館から多数の作品が来ているので、いくぶん目新しさがあった。

黒の時代にも、色彩のある絵を描いている。油彩画《風景》やパステル画《ブルターニュの風景》はタイトルは風景だが、そこに描かれているのはおそらく心の風景でもある。
また、宗教や文学をモチーフにした《宗教的場面:キリストと使徒たち。アラスの礼拝堂装飾のための習作》《ロンスヴォーのローラン》《十字軍》などは、この時代の作品のなかでも象徴主義が感じられて魅力的だ。

黒の時代の版画たちには、シリーズ毎にそれぞれの特徴があると思う。個人的には石版画集『エドガー・ポーに』が好みだが、今回はこれら版画集については眺めただけ。
あと、版画集『悪の華』からも展示されているので、アニメ『惡の華』でボードレールの詩集に関心をもったのなら、ご覧になってみてはいかがだろう。

最後、「色彩のファンタジー」と題された展示。なんども観てきた作品については割愛するが、色彩のルドンはパステルの鮮やかさが合っていると思うので、パステルっぽい鮮やかな色で描かれた油彩画はまがいもののように見えてしまうのが微妙だ。
《アーケードのある背景の若い娘の肖像》はグレーの下地にサンギーヌという赤チョークがおだやかに調和していて美しかった。
最後を飾る《聖母》はルドンが永眠したとき、イーゼルに載せられていたという。空白部分があり、未完とされるが、果たしてほんとうに未完なのか。ルドンのなかでは十分に完成していたのではと思われるほど、美しく静かな色と豊かな精神性が溶け合っているようだ。もしかして、ルドンは黒から色彩を経て、ここに到達していたのではないだろうか。
ルドン_聖母


2013.05.11 Saturday

貴婦人と一角獣展@国立新美

国立新美術館「フランス国立クリュニー中世美術館所蔵 貴婦人と一角獣展」

タピスリーにはあまり興味はないけれど、これは見逃してはいかんのですよ。というのは、パリで寄ったのに、ストのせいで入れなかった苦い経験があるので、リベンジしなければならないのです。そのことについてはこちらで少し触れています。

貴婦人と一角獣展
展示室に入ってみると、天井が高くて広い空間が6枚のタピスリーで埋まっているのだから、驚きの大きさだ。

貴婦人と一角獣_触覚貴婦人と一角獣_味覚貴婦人と一角獣_嗅覚
貴婦人と一角獣_聴覚貴婦人と一角獣_視覚貴婦人と一角獣_我が唯一の望み
六連作タピスリー《貴婦人と一角獣》
有力者ジャン・ル・ヴィストが注文主とされ、旗や盾にル・ヴィストの紋章である3つの三日月が描かれている。獅子とユニコーンも同家に関係しているようだ。
《触覚》《味覚》《嗅覚》《聴覚》《視覚》の五感と《我が唯一の望み》がテーマになっていると考えられている。《我が唯一の望み》は愛や知性などと考えられているみたいだが、五感を描いた首飾りを小箱から出すところなのか仕舞うところなのか、このタピスリーから始まるのか終わるのか、謎に包まれている。
ひとつひとつに見どころが多く、飽きることがない。オレンジや松など4種類の木、文様にもみえる植物、五感を象徴したりもする動物たちなど。とくにウサギがたくさんいて愛らしい。ヤギも一頭だけいた。
よく見てもなかなかわかりにくいが、デジタル映像でアップで見ると、貴婦人の顔もずいぶん違う。正直あまり美しい顔じゃないところが残念ではあるが、全体を見ると、そんなことはまったく感じない。
構図もタピスリーへの収まり方がそれぞれに違って、例えば初め、《味覚》がいちばん美しいように感じたが、観ているうちに甲乙つけがたくなって、どれがいいのかわからなくなった。細かく観察するのもいいが、6枚を見渡せる中央に立ってぐるぐると自分が回っていくと、不思議な気分になるので、おすすめかもしれない。

ほかに彫刻、装身具、ステンドグラスなどが展示され、それが《貴婦人と一角獣》を観る参考になるので、関連展示を見てから、もう一度、6連作タピスリーの間に戻るといいだろう。

日本でこのタピスリーが見られるのはたぶん奇跡のようなことだろうから、せっかくのチャンスを逃さないようにしないと。パリで観ようと思ってもストで入れなかったりするかもしれないからね。


2013.05.04 Saturday

アントニオ・ロペス展@Bunkamura ザ・ミュージアム

Bunkamura ザ・ミュージアム「現代スペイン・リアリズムの巨匠 アントニオ・ロペス展」

アントニオ・ロペス展アントニオ・ロペス展2
季節もよく天気もいいので、自転車をちんたら漕いで観てきた。自転車はBunkamuraすぐ裏のアットパーク渋谷宇田川町に置いて、1時間100円で戻るつもりが、少々超えてしまい200円支払うはめに。ぬかった。

アントニオ・ロペスのことは名前くらいしか知らなくて、ルーベンス展に寄ったときに次回の展覧会と知り、ぜひ行ってみようと決めていた。
その理由はチラシの少女の絵に惹かれたからだ。これ一枚だけでもいいから、みたいと思った。

アントニオ・ロペス_マリアの肖像
アントニオ・ロペス《マリアの肖像》
長女9歳のときの素描。チラシでみたときにはまさか紙に鉛筆だとは思いもしなかった。コートの質感と重みが緻密だし、紙がセピア色のせいかもしれないが、てっきり油彩画だと思い込んでいた。近寄って見ても、鉛筆画とはにわかには信じられなかった。
少女の透明で理知的な眼差しから目を離すことができない。自分が描かれていることや、父親が描いていること、さまざまな感情を表情と佇まいのなかに見ることができる。「現代スペイン・リアリズム」というのは作風や技法のことを云うのではないということだ。
「ロペスは、素描を油彩画の準備段階としてではなく、完全に一つの独立したジャンルとしてみなしている」(Bunkamura ザ・ミュージアムの展覧会特集ページより)というのが、疑いなく感じ取れる、そんな完成度をもっている。
ふだんはポストカードくらいしか買わないのに、額絵とマグネットまで買ってしまった。いつも目の届くところに置いて眺めたいと思ったから。

素描はほかにもいくつかあって、なかでも《バスルーム》のリアルな美しさとその大きさには圧倒された。

アントニオ・ロペス_グラン・ビア
アントニオ・ロペス《グラン・ビア》
緻密に描かれた街の風景もすばらしいが、カラフルなものより、この作品のような、落ち着いた色味で統一されている作品に、より魅力を感じる。墨絵に通じる、静謐さのような。
《アビラのバラ》などにみられる余白も何やら東洋的な印象だ。
グラン・ビアに話を戻すと、ほかの作品にもみられるように、曲がった道に視線が誘導される風景に心惹かれる何かがロペスにはあるのだろうか。

アントニオ・ロペス_眠る女(夢)
アントニオ・ロペス《眠る女(夢)》
今回もっともインパクトを受けた作品。木彫による立体感が生々しくて、穏やかな寝顔に美しさがあるのに、気持ち悪く感じるほどだ。画像では何も伝わらない。


名前程度で漠然としたイメージしかなかったアントニオ・ロペスを心にしっかりと刻み込むことができた展覧会に感謝したい。
僕は《マリアの肖像》という一枚の鉛筆画の魅力にすっかり取り憑かれてしまったのだ。

2013.03.31 Sunday

ルーベンス展@Bunkamrura ザ・ミュージアム

Bunkamura ザ・ミュージアム「ルーベンス 栄光のアントワープ工房と原点のイタリア」

ルーベンス展
ルーベンスがそんなに人気があるとは思ってもいなくて、訪れてみると、なかなかに混んでいてびっくり。バロックの巨匠とされるルーベンスが人気がないわけがないし、とくに日本では「フランダースの犬」でも有名なんだから、侮ってすみませんでしたー。
個人的には、ルーベンスの画風がとくに好きというわけではないし、ぶよっとした身体というか脂肪の表現がまあ、苦手なんですよね(その程度のことなんですが)。
ならどうして観に行ったのかというと、やっぱりルーヴル美術館で観た巨大な作品群に圧倒された記憶がいつまでも忘れられなくて、やっぱり観ておかないと、と思うからでしょう。そのときの記録はこちら→ルーヴル美術館(その2)

本展のみどころのうち、自分がもっとも興味深かったのは、ルーベンスの工房で作品がどうやって制作されていたかが展示をみていくとわかるようになっているところ。ティツィアーノに多くを学んだというのは意外だった。
工房作品には、ルーベンス自身が、例えば全体のうち人物だけを描いたもの、最後に手を入れたもの、信頼出来る助手にすべて任せたものなんかがあったそうだ。工房の助手たちにはルーベンスと同じように描くことが求められたというのだから大変だ。また、工房に所属していない作家との共同制作もあって、ルーベンスが確立した優れて効率的な大工房運営システムこそが成功の理由だったことが納得できた。

ルーベンスの魅力は、躍動感と生命力にあふれたダイナミックな構図にあると思う。ときに画面が散漫になって焦点がぼやけたりするのが難点だが。とにかく、大画面でこそ、ルーベンスの魅力が発揮されると勝手に思っているので、大きな作品があまりない本展はやはり物足りない。仕方のないことだとはわかっていますが。
それでも、《ヘクトルを打ち倒すアキレス》《復活のキリスト》等々、油彩画の多くが日本初公開らしいし、観る価値は十分だった。版画作品にも油彩画から取り入れられたものもあって、みどころは多い。

でもって、いちばんよかったかなと思うのはこちらの作品。ルーベンスじゃなくて工房出身者ですが。
ヴァン・ダイク_悔悛のマグダラのマリア
アントーン・ヴァン・ダイク《悔悛のマグダラのマリア》
顔立ち、表情、肌の色が美しいし、肉体の波打ち具合にルーベンス的なものを感じるけども、嫌な感じがしない。

ルーベンスが好きな方、「フランダースの犬」に想い出がある方、ダイナミックなバロック絵画に興味がある方、いろんな興味で出かけて行ってほしいですね。
グッズも充実していて、「フランダースの犬」関連のものもいくつかあって楽しい。目玉作品のひとつ《ロムルスとレムスの発見》から、三粒のさくらんぼを運ぶキツツキが図案化されてグッズにいろいろと使われていました。
レンブラント展キツツキ


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