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2014.02.23 Sunday

宗達を検証する(8)「楊梅図屏風」の様式と主題

連続講座「宗達を検証する」第8回 講師:林進
紙本金地著色「楊梅(やまもも)図屏風」(個人蔵)の様式と主題 ―「一条兼遐(かねとお)書状[後水尾院勘返状]」に言う「楊梅之屏風」との関係―
1月18日 於:Bunkamura B1特設会場

まとめもせずにぼやぼやしているうちに次の第9回が終わってしまったので、もう忘却の彼方へと去ってしまったけども、テキストを頼りに第8回をどうにかやっつけたいと思います。
俵屋宗達_楊梅図屏風

  • 1998年に現れた「花木図屏風」。1939年に上野の日本美術協会で開かれた「東洋古美術展観」で彩色「流ニ秋草図屏風」として公開された作品。1999年から12年かけて修復された。現在個人蔵。
  • 落款・印章、書付もないが、白波を立てて流れる渓川の水の技法や筆法は宗達のものだ。楊梅の実の表現が印象深く、何か特別な意味があると考え、『楊梅図屏風』と名付けることにした。
  • 「醍醐家文書」の一通、「御せん丸宛 一条兼遐書状(後水尾院勘返状)」は次のようなもの。簡単に言うと「宗達がわたし(一条兼遐)に、屏風三双に下絵を描きつけ終えた、三双のうち『楊梅之図』はいち早く金箔を置き終えた、と言ってきた」という内容。
  • 屏風三双は、寛永7年の法橋叙位の返礼として三御所(明正天皇、後水尾院、東福門院)に進上するもので、このうち後水尾院から兼題として与えられたのが「楊梅之屏風」だったと考察する。狩野山雪が法橋叙位の御礼として、四御所に屏風四双を進上しているのと同様のケースと考えられる。御所からの注文のため落款等がない。
  • 「楊梅図屏風」の下地処理は「槇檜図屏風」(石川県立美術館蔵)と同じ、川波の均一で伸びやかな水墨線は「松島図屏風」(フリーア美術館蔵)の海波と同じ線質、なだらかな曲線の緑青土坡は「源氏物語図屏風・関屋図」(静嘉堂文庫美術館蔵)と同じ形。
  • 朝廷は素庵校訂古活字本『本朝文粋』を野野村知求(宗達の学者名か)が出版した功績に対する褒賞として1630年春に宗達に法橋を叙位したと考える。慣例となっている叙位への返礼は、中和門院の崩御と明正天皇の即位などの事情があって遅れたようだが、後水尾院は仙洞御所進上の屏風一双に自ら選んだ画題「楊梅」を金箔地に描くことを命じた。
  • 後水尾院は、亡き母、中和門院の好物であった楊梅の実を手向けの果実として追善するために、楊梅の兼題を宗達に与えたのではないだろうか。長く棚引く「紫(銀)の雲」は皇后の異称であり、弔いの意味がある。これを受けて宗達は、楊梅のモティーフを趣向(横筋)とし、直前に模写した海田采女本『西行法師行状絵詞』を「時代」(縦筋)として構想したのではないか。第一巻第一段に描かれた鳥羽殿の場面、第一番目の障子絵をみて西行が「初春の雪積りたる山の麓に谷河の流れたる所を見て」と詠んだ、その障子絵を再び屏風絵として絵画化したものである。
  • 1939年の「東洋古美術展観」では彩色「流ニ秋草図屏風」とともに「雑木林図屏風」が展示され、同図録に二つの屏風が同じページに単色図版で掲載された。この「雑木林図屏風」は、宗達工房作「樹林図屏風」(フリーア美術館蔵)等と構図が共通することから、「楊梅図屏風」の対として描かれた宗達作品と考える。名付けるとしたら「花橘図屏風」となる。
  • 〔第9回での補足〕「花橘図屏風」では、西行が詠んだ「聞かずとも此処を瀬にせむ郭公 山田の原の杉の群立ち」を構図したものに、郭公(ホトトギス)と取り合わされて詠まれてきた白い花橘を描き入れた。
  • 宗達の出身地について。野野村知求、江村知求などの名前から考えて、近江国(江州)野洲群野村、つまり近江八幡ではないかと想像している。堀杏庵も同じ出身地。

今回の重要点。寛永6年(1929)に角倉素庵校・野野村知求(宗達か)刻の古活字版『本朝文粋』が刊行され、翌年に尾張初代藩主徳川義直に進上、禁裏、公家等に献上され、この功績により同年、法橋が叙位されたと推測していることである。そして、その御礼として三御所に進上された三双のうち、後水尾院に進上されたのが「楊梅図屏風」であり、その対をなすのが「花橘図屏風」(旧「雑木林図屏風」)であったという見方である。
この一連の考え方は宗達作品の制作時期にかかわるので、非常に重要な指摘である。それについては第9回で。


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