Bunkamura ザ・ミュージアム「シャヴァンヌ展 水辺のアルカディア ピュヴィス・ド・シャヴァンヌの神話世界」 2014.1.2-3.9
まさか日本でシャヴァンヌ展がみられるなんて、想像したこともなかったので、この展覧会の開催を知ったときには驚いた。シャヴァンヌの名前を初めて意識したのは、国立西洋美術館所蔵《貧しき漁夫》だったと思う。その後、フランスの多くの公共施設でいくつもの壁画を手がけ、<19世紀最大の壁画家>とも称されることを知った。
シャヴァンヌに感じる魅力は、荒々しさのない静かで牧歌的ともいえる、神話的な情景を、フレスコ画に例えられる抑えた色味で描いていることである。とくにフランスを戦乱や内乱が襲った時代を背景に、叙情的な理想郷を描くことで、平和への祈りを込めた。
男性女性問わず多く描かれた裸体はギリシャ彫刻を思わせるものが多く、古典的とも言われる。しかし、そこに描かれている情景は幻想的で寓意に満ち、独特の平面性をもつ。そのあたりが象徴主義の先駆けともいわれる所以なのかとも感じる。
ピュヴィス・ド・シャヴァンヌ《秋》
ピュヴィス・ド・シャヴァンヌ《海辺の乙女たち》
壁画の縮小版がたくさんあって、そういう仕事をしているから、壁画家でもあるシャヴァンヌの画業を極東の島国でもみられるのだなあ、なんて感謝したり。リヨン美術館の壁画はぜひみにいきたいものだ。
《瞑想(習作)》や《秋》がとても気に入った。デッサンや習作、未完成作に惹かれるからかもしれないし、余白が好きなのかとも思う。《聖人のフリーズ》もすばらしくて、これはリズムがいいからなのか、単純にこうした構図が好きなのか、心地よさを感じる。
静かな絵を静かな心持ちでみて、穏やかな気持ちになる。そんな、すばらしい展覧会だった。こういう企画がもっと実現されるとうれしい。