江戸東京博物館
「ファインバーグ・コレクション展―江戸絵画の奇跡―」2013.5.21―7.15
米国のファインバーグ夫妻が蒐集してきた江戸絵画を中心とする日本美術のコレクションから約90点が里帰り(これって重ね言葉かな)。
若いころにメトロポリタン美術館で目にした江戸絵画に感銘を受けてコレクションを始めたそうだが、自分の目を信じて蒐集しながら、さらに見る目を養っていったんだろうな、などと想像すると、まぶしい。
琳派
最初に目に飛び込んでくるのは俵屋宗達の掛け軸《虎図》。丸っこくてユーモラスな虎が半身だけ見せるという構図が抜群。よくみると細かな毛が無数描かれていて、毛並みの柔らかさを生み出している。
酒井抱一《十二ヶ月花鳥図》はほかにもいくつかあるが、どれも貫禄の出来。すべてが一堂に会する機会があればどんなにしあわせだろうと思う。
鈴木其一《群鶴図屏風》。其一らしい奔放なデザイン性が生み出すリズムがみごと。これは
大琳派展でみたのと同じじゃないかなと思ったら、そうだった。あのときにも来日していたのか。
鈴木其一《山並図小襖》《松島図小襖》も大胆にデザイン化され雄大な広がりが感じられる。
鈴木守一《平経正弾琵琶図屏風》は背景がこげ茶になっているが、銀箔らしくて、これが銀色に光っていたらさぞかし魅力ある画面になっていただろうと思うと残念だ。
文人画
文人画、南画のたぐいはやや苦手にしているのだが、今回は、池大雅《孟嘉落帽・東坡戴笠図屏風》の迫力ある筆使いに感心したり。
谷文晁《秋夜名月図》の落款のでかさには驚いたが、枯れた感じの画面に赤い落款が存在感を誇示していて、うまく馴染んでいた。
四条円山派
円山応挙《鯉亀図風炉先屏風》は裏に絹を張ってそこに水紋を描いて合わせた珍しいもの。水紋が広がっていくようにみえた。
珍しいといえば、竹内栖鳳《死んだ鶴図》は西洋画によくある、狩った獲物を吊るしたりした光景を日本画で描いたもので、西洋画ほどグロテスクではなかった。
このほかにも、奇想派の枠で伊藤若冲、曾我蕭白、そして浮世絵と、幅広く集めたものだなと感心する。江戸絵画というくくりでいえば、多岐にわたって優品が揃っているので、かならず気に入る作品があると思う。
残念だったのはショップのポストカードのほとんどが大判だったこと。展覧会でいつも何枚かポストカードを買うけど、大判だとファイルに入れられないので、今回は断念した。