国立新美術館「フランス国立クリュニー中世美術館所蔵 貴婦人と一角獣展」
タピスリーにはあまり興味はないけれど、これは見逃してはいかんのですよ。というのは、パリで寄ったのに、ストのせいで入れなかった苦い経験があるので、リベンジしなければならないのです。そのことについては
こちらで少し触れています。
展示室に入ってみると、天井が高くて広い空間が6枚のタピスリーで埋まっているのだから、驚きの大きさだ。
六連作タピスリー《貴婦人と一角獣》
有力者ジャン・ル・ヴィストが注文主とされ、旗や盾にル・ヴィストの紋章である3つの三日月が描かれている。獅子とユニコーンも同家に関係しているようだ。
《触覚》《味覚》《嗅覚》《聴覚》《視覚》の五感と《我が唯一の望み》がテーマになっていると考えられている。《我が唯一の望み》は愛や知性などと考えられているみたいだが、五感を描いた首飾りを小箱から出すところなのか仕舞うところなのか、このタピスリーから始まるのか終わるのか、謎に包まれている。
ひとつひとつに見どころが多く、飽きることがない。オレンジや松など4種類の木、文様にもみえる植物、五感を象徴したりもする動物たちなど。とくにウサギがたくさんいて愛らしい。ヤギも一頭だけいた。
よく見てもなかなかわかりにくいが、デジタル映像でアップで見ると、貴婦人の顔もずいぶん違う。正直あまり美しい顔じゃないところが残念ではあるが、全体を見ると、そんなことはまったく感じない。
構図もタピスリーへの収まり方がそれぞれに違って、例えば初め、《味覚》がいちばん美しいように感じたが、観ているうちに甲乙つけがたくなって、どれがいいのかわからなくなった。細かく観察するのもいいが、6枚を見渡せる中央に立ってぐるぐると自分が回っていくと、不思議な気分になるので、おすすめかもしれない。
ほかに彫刻、装身具、ステンドグラスなどが展示され、それが《貴婦人と一角獣》を観る参考になるので、関連展示を見てから、もう一度、6連作タピスリーの間に戻るといいだろう。
日本でこのタピスリーが見られるのはたぶん奇跡のようなことだろうから、せっかくのチャンスを逃さないようにしないと。パリで観ようと思ってもストで入れなかったりするかもしれないからね。