Bunkamura ザ・ミュージアム「ルーベンス 栄光のアントワープ工房と原点のイタリア」
ルーベンスがそんなに人気があるとは思ってもいなくて、訪れてみると、なかなかに混んでいてびっくり。バロックの巨匠とされるルーベンスが人気がないわけがないし、とくに日本では「フランダースの犬」でも有名なんだから、侮ってすみませんでしたー。
個人的には、ルーベンスの画風がとくに好きというわけではないし、ぶよっとした身体というか脂肪の表現がまあ、苦手なんですよね(その程度のことなんですが)。
ならどうして観に行ったのかというと、やっぱりルーヴル美術館で観た巨大な作品群に圧倒された記憶がいつまでも忘れられなくて、やっぱり観ておかないと、と思うからでしょう。そのときの記録はこちら→
ルーヴル美術館(その2)
本展のみどころのうち、自分がもっとも興味深かったのは、ルーベンスの工房で作品がどうやって制作されていたかが展示をみていくとわかるようになっているところ。ティツィアーノに多くを学んだというのは意外だった。
工房作品には、ルーベンス自身が、例えば全体のうち人物だけを描いたもの、最後に手を入れたもの、信頼出来る助手にすべて任せたものなんかがあったそうだ。工房の助手たちにはルーベンスと同じように描くことが求められたというのだから大変だ。また、工房に所属していない作家との共同制作もあって、ルーベンスが確立した優れて効率的な大工房運営システムこそが成功の理由だったことが納得できた。
ルーベンスの魅力は、躍動感と生命力にあふれたダイナミックな構図にあると思う。ときに画面が散漫になって焦点がぼやけたりするのが難点だが。とにかく、大画面でこそ、ルーベンスの魅力が発揮されると勝手に思っているので、大きな作品があまりない本展はやはり物足りない。仕方のないことだとはわかっていますが。
それでも、《ヘクトルを打ち倒すアキレス》、《復活のキリスト》等々、油彩画の多くが日本初公開らしいし、観る価値は十分だった。版画作品にも油彩画から取り入れられたものもあって、みどころは多い。
でもって、いちばんよかったかなと思うのはこちらの作品。ルーベンスじゃなくて工房出身者ですが。
アントーン・ヴァン・ダイク《悔悛のマグダラのマリア》
顔立ち、表情、肌の色が美しいし、肉体の波打ち具合にルーベンス的なものを感じるけども、嫌な感じがしない。
ルーベンスが好きな方、「フランダースの犬」に想い出がある方、ダイナミックなバロック絵画に興味がある方、いろんな興味で出かけて行ってほしいですね。
グッズも充実していて、「フランダースの犬」関連のものもいくつかあって楽しい。目玉作品のひとつ《ロムルスとレムスの発見》から、三粒のさくらんぼを運ぶキツツキが図案化されてグッズにいろいろと使われていました。