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2012.08.26 Sunday

レーピン展@Bunkamura ザ・ミュージアム

渋谷のBunkamura ザ・ミュージアムで開催中の「国立トレチャコフ美術館所蔵 レーピン展」に行ってきた。

8月21日には、"青い日記帳×レーピン展『ブロガー・スペシャルナイト』"に参加させていただいて、座談会など楽しいひとときを過ごしたのだが、肝心の絵をみる時間が30分に満たなかったので、あらためて行って参った次第であります(もともと行く予定だったけど)。

スペシャルナイトについてはすでにたくさんの方が、詳しい内容をブログにまとめていらっしゃるので、展示風景写真をいくつか載せるだけで許してもらいます。
ちなみに座談会「レーピンの魅力を語る」の参加者は山下裕二氏(明治学院大学教授)、籾山昌夫氏(神奈川県立近代美術館主任学芸員)のお二人、ナビゲーターはスペシャルナイトを発案された、ブログ「弐代目・青い日記帳」主宰のTakさんでした。

レーピン展ナイト01 レーピン展ナイト08
レーピン展ナイト09 レーピン展ナイト06
(注)撮影許可を得ています。

レーピンは19世後半から20世紀初頭にかけて活躍した、近代ロシア絵画の代表的画家だが、ロシア美術が日本であまり馴染みがないこともあってか、それほど知られていない。《ヴォルガの船曵き》(国立ロシア美術館所蔵なので今回は出品されていない)なら知っている人もいるだろうが、本展には、その習作と準備素描がそれぞれ数点出品されていて、これも貴重だ。

自分はもう10年以上も前になるが、ロシアでトレチャコフ美術館もロシア美術館も訪れているが、国内でレーピンに関する展覧会として過去にみたのは2回。いずれも最近のことだ。どちらにもレーピンのすばらしい作品が出品されていた。が、今回はなんといっても日本で過去最大の回顧展なのだから見逃す手はない。


レーピン展
2012.8.4−10.8 Bunkamura ザ・ミュージアム

これまでのレーピンの印象は、基本的に写実的でリアリスティックというものだった。今回、座談会で山下先生が、レーピンの絵を図像学的(正確にはなんとおっしゃったか確信がもてませんが)と指摘されたのが目からウロコだった。構成から衣装や小物まで、どうやら相当にこだわり、意味を込めた、そういう作品があるのだ。もちろん、短時間で描いた作品もあるのだが、そこには対象の本質を見つめる鋭い視線が存在する。

レーピン_作曲家モデスト・ムソルグスキーの肖像
《作曲家モデスト・ムソルグスキーの肖像》
アルコール依存症だった作曲家の入院先で描かれた肖像画で、この約10日後に作曲家は亡くなっており、まさにムソルグスキーの最後の姿としてとどめられることになった。心ここにあらずの表情なんかを見ると、作曲家が今どういう状態にあるかが手に取るようにわかる気がする。レーピンの、本質に迫る揺るぎない画力のおかげだ。

レーピン_皇女ソフィア
《皇女ソフィア》
レーピンが時代を背景に綿密な調査に基づいて描いた初めての歴史画。相当インパクトのあるこわい絵だが、隅々まで見ずにはいられない強い吸引力を秘めている。解説もなしにみたら、不思議なことだらけであることを考えると、いくつもの意味を絵に込めているだろうことが想像できる。後ろから眼光鋭く皇女を見つめる侍女兼監視役といったふうな少女にどうしても目がいってしまう。

レーピン_妻-ヴェーラ・レーピナの肖像
《休息−妻・ヴェーラ・レーピナの肖像》
X線写真で撮ったところ、修正以前の彼女の目は開いていたそうだ。単に、モデルを務めているうちに寝てしまったため眠る姿に描き直した、というだけではなさそうな気もする。

レーピンが描く肖像画というか人物画は、なんというか量感とはまた違う密度の高さがあって、重さが感じられる。それと、肖像画では手の表現が非常に特徴的だ。あきらかにその人物がもっている職業性や内面性を手に強く表そうとしている。と、思うのだが、もしこれからレーピン展に行ってみようと思う方は騙されたと思って、ちょっと手に注目してみてください。

歴史上の人物・出来事や市井の人びとの暮らしなど、モチーフはさまざまだが、レーピンはやはりロシアの人びとの内面に迫ろうとしていたように感じる。群衆や集団を描いても、ひとりひとりに強い内面性が浮かんでいて、単なる光景にとどめていない。そういった意味でも、個人的にレーピンを再評価する貴重な機会になった。

あと、《樫の森の十字架行進-奇跡によって現れたイコン(習作)》が出ていて、その完成作画像が参考図版として展示されていたが、同時に例示されていた《クールスク県の十字架行進》の緻密さに目を奪われ、実物をぜひみたくなった。もしかするとトレチャコフ美術館でみているかもしれないが、みたかどうかも憶えていないのが残念だ。


デッサン等をみてもわかるけど、レーピンはうまい! これは誰も否定出来ないだろう。
ロシア美術のことは全然知らないという人でも、レーピンの迫力と情感のある絵をみれば、ただ知らなかっただけで、西欧とは違う場所にも、世界的に有名な画家たちと遜色ないすばらしい画家がたしかにいたことを感じられるだろう。

Bunkamura ザ・ミュージアムの後、この展覧会は以下に巡回する。

浜松市美術館 2012.10.16ー12.24
姫路市立美術館 2013.2.16ー3.20
神奈川県立近代美術館 2013.4.6ー5.26

今回のような大規模なレーピン展が日本でこの先いつ開かれることになるかわからないので、後悔しないようにぜひお出掛けください。個人的には、イリヤ・レーピンがロシア近代美術を代表する画家として日本で多くの人が知るきっかけになればと願っている。


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