出光美術館「日本の美・発見VI 長谷川等伯と狩野派」 2011.10.29-12.18
狩野派が全盛を誇っていた京に七尾から上り、一代で狩野派を脅かす存在となる絵師集団を築いた長谷川等伯の特徴を、狩野派との比較と響き合いから探る企画。誰もが知っている名品が目玉となって出ているわけではないが、それぞれの特徴を捉える作品の配置が興味深い展示だ。
狩野派らしい明快な金屏風の後に長谷川等伯《竹虎図屏風》が現れると、その個性的な画面に目を奪われる。余白と奥行、愛嬌のある虎の姿、なるほどこれが等伯だ(江戸の狩野探幽が、これは狩野派の作品だと後に書き入れていることについて、等伯の作品と知りつつ書いたとの推測が、解説としてあった)。
等伯が古典に学び、独自の画風を確立していったことを明示する展示では、日本で高く評価されていた牧谿らの水墨画が並んでいる。なかでも牧谿《平沙落雁図》は、その茫漠たる空間の広がりを繊細な濃淡で描いていて、なんかものすごいものをみた気がした。
長谷川等伯《竹鶴図屏風》、《松に鴉・柳に白鷺図屏風》などからは、等伯が空間の広がり、湿潤さなどの空気感に独特の表現で迫ろうとしたことが窺い知れる。とくに空間については、たんに余白で広がりを表現しただけでなく、空間は絵の枠をはみ出てずっと広がっていることを、その確かな技術で描ききっているように思う。
その後の長谷川派、狩野派が互いを意識しつつそれぞれの特徴を発揮していったことは想像に難くない。それでも互いを意識するなかで、相手のよさを取り込んだりもしていたことが展示では示されていた。
狩野派と長谷川派を比較して観ることで、それぞれのよさを感じることができる好企画。というか、長谷川等伯好きは満足すること間違いなし。