東京国立博物館平成館
文化財保護法制定60周年記念特別展「仏教伝来 平山郁夫と文化財保護」2011年1月18日―3月6日
東博パスポートの有効期限切れが迫っているのが出向いた理由ではある。とはいえ、平山郁夫の大作を見たことがないので、一度見てみたいという興味はあった。
平山郁夫<天堂苑樹>
仏伝シリーズの最後作品。釈迦が森の中で菩薩たちに説法している様子を金色で描いていて、まるで中心の炎とそれを囲む炎のように神秘的な光景。もやっとして幻想的だが敬虔な気持ちが静かに燃えているような、とても雰囲気にあるいい絵だと思う。
このほか、「大唐西域壁画」以外にはあまり絵はないが、仏伝シリーズの画風が個人的には好みだ。
第2部 文化財保護活動の結実―「大唐西域壁画」
玄奘三蔵のたどった道を朝から夜まで7場面に描いた大作。薬師寺に奉納された壁画の全点が展示されるという驚き。寺外では初めての公開とか。
平山郁夫<嘉峪関を行く・中国>
遠くの山脈、近くの山、軍艦のように見える関、一行がらくだに乗って進む大地が雄大に描写され、旅の壮大さと厳しさを想像させるとともに、力強い希望を感じさせる。
<明けゆく長安大雁塔・中国>、<西方浄土 須弥山>、<ナーランダの月・インド>の大下図はとても興味深かった。平山作品はわりともやっとした仕上がりだが、下図はかなりしっかり描き込まれていて、ここからああいう風に仕上げていくのかと思うとおもしろい。
平山郁夫の文化財保護への強い熱意というか使命感、絵画制作のすべてがつながっていることが感じられる独特な雰囲気の展覧会だった。