山種美術館「歴史を描く―松園・靫彦・古径・青邨ー」 2011.1.8-2.17
山種が誇る近代日本画から歴史を描いた作品を集めた展示。これまでに別の形で何度も目にしてきた作品もあれば、初めて聞く作家の名前もあって、山種らしさに納得。
とくに安田靫彦と小林古径が好きなので、それだけで駆けつける理由になるわけだけど、今回、自分が意外に前田青邨のことを気に入っていることに気づかされた。
<大物浦>の大胆な構図と、荒々しい海の様子を表している濃い青の不穏さ。
若き吉田松陰の意志が眼光に宿っている<蓮台寺の松陰>も好きだ。
たぶん初見の<三浦大介>(みうらおおすけ。ハマの番長とは違う)以外は何度か見ているが、これだけの点数をまとまって見たのは初めてかもしれない。<異装行列の信長>もあったし、こうなると<腑分け>も歴史画扱いで出してもよかったのではないかと思うのだが。
前田青邨<腑分け>
当たり前に好きな安田靫彦<壬生忠岑>、<出陣の舞>、小林古径<蛍>、<西行法師>、伊東深水<吉野太夫>のほか、厳島神社に『平家納経』奉納に向かう舟の一行を、絢爛にやや大げさに描いたような守屋多々志<平家厳島奉納>、西行法師と吉野山の背景が意外にはまっている羽石光志<吉野山の西行>などがなかなか楽しかった。
描かれた信長の年齢は違うので単純に比べられないけど、前田青邨<異装行列の信長>(左)は肖像画に捉えられずに自由な信長像を描き出している。一方の安田靫彦<出陣の舞>はザ・信長という感じだ。
歴史画の楽しみは、作家がいろいろなものからインスパイアされ、そして想像力をふくらませてどう描いてくれるのか、というところにあって、さらに、やはりロマンを感じさせてくれれば尚のこといい。
そういう意味でとても楽しい展覧会だった。
あと、上村松園がぞろっと出ているので、好きな方はお見逃しなく。