ミヅマアートギャラリー「山口晃展 いのち丸」2010.10.27-11.27
台風が接近してくるなか、やや不安に思いつつも出かけた初めてのギャラリー。
入ると、ご本人がいらしてて、びっくり。反射的にこんにちはと頭を下げたので、以前に会ったことがあるのかと不安な気持ちにさせてしまったかもしれない。そうだったらすみません。縁もゆかりもないのでご安心を(これを読むこともないでしょうが)。
山口晃の個展はこちらのギャラリーでは4年ぶりとのこと。
本展では、さすらいの男児「いのち丸」の旅物語が、色彩を配した白描画の中に展開されます。物語は、美しい顔を無残に損なわれ、それを因果の見世物にして旅廻りをする乙女と「いのち丸」との出会いから始まります。
しかし、始めから物語は脱線し、山口の興味の赴くままに、連想とも単なる羅列ともつかぬ作品が並びます。それに合わせるように、墨や鉛筆、ペンや油彩に始まり、光や影、果ては盲点に至るまで様々な素材が試され、絵画や立体となって展開されます。<・・・>
《見世もの》や《Spe-ll/r-machine》で押し出される、力強くしなやかな線、《河原町電柱》や《儒者の家》に見られる、山口晃らしい遊び心を引き出す緻密な線、「芝居見物」として並んだ《暫》《道成寺》《勧進帳》の、静のなかに描かれた動の一瞬など、どれも興味をそそられる。
ビデオインスタレーション《行け!いのち丸》で、いのち丸が疾走するのは、今まさに台風が接近して雨に打たれる道路。
《富士山大爆発》はどうやって見ることができるのかよくわからずじまい。なんとか端っこだけは見ることができたけど。
いつものごとく、アートとは何なんだろうなんてことが頭をよぎることもなく、全体像に思いを巡らせることもなく、単純に墨の濃淡と胡粉で描かれる作品世界って好きだなと思いながら、愉快に楽しんだ。