国立西洋美術館「ナポリ・宮廷と美―カポディモンテ美術館展 ルネサンスからバロックまで」 2010.6.26-9.26
「山の上」を意味するカポディモンテ(ということは、御茶ノ水にあるのはカポディモンテ・ホテル?)。ナポリの街を丘の上から見下ろす元宮殿の美術館から東京にやってきたのは、16-17世紀の作品を中心とする80点。
「砂漠で悔悛するマグダラのマリア」、「敵将を酔わせて首を斬るユディト」、「高官の求婚を拒んだために拷問死させられる聖アガタ」、「3つの黄金の球で表される聖ニコラウス」などを描いた作品が複数あって、さすがに人気のあったモチーフであったことがよくわかる。
なかでも印象に残ったのは、ティツィアーノ・ヴェチェッリオ《マグダラのマリア》、マッシモ・スタンツィオーネ《聖アガタの殉教》、フランチェスコ・グアリーノ《聖アガタ》、マッティア・プレーティ《聖ニコラウス》。
とくに、アガタがまさに乳房を切り取られんとする場面(《聖アガタの殉教》)、切り取られた後に血に染まった白い服の胸をおさえるアガタ(《聖アガタ)》を描いた上記2点、それに、ユディトが敵将ホロフェルネスの首を切り取ろうとする場面(アルテミジア・ジェンティレスキ《ユディトとホロフェルネス》)、切り取られ血の流れる首の断面を生々しく描いた作品(マッティア・プレーティ《ユディト》)は、かなり凄惨。当時の人々はこういう絵をどういう気持ちで飾り、眺めたのだろうか。
聖アガタの場合、表情にまったくの後悔も迷いも見られず、凛とした美しい顔立ちで描かれていることが救いになっているのかもしれない。
あと、グイド・レーニ《アタランテとヒッポメネス》は相当ユニークな作品だと思うのだけど、なんか気になるおもしろさがあった。
この時代の作品が好きな人にはたまらない展覧会だろう。それにしても、ナポリに限らず、イタリアに行ったらこういう作品が死ぬほどあるんだろうなと思うと、ちょっとおそろしい。
この後、常設展とともに、版画素描展示室で「オノレ・ドーミエ版画展―『カリカチュール』と初期政治諷刺画―」を楽しんだ。9月5日までなので、興味のある方はお早めに。