根津美術館の新創記念特別展 第5部
「国宝燕子花図屏風 琳派コレクション一挙公開」をみた。
根津美術館はまったくの初めて。白状すると、最近まで、美術館はてっきり根津にあると思い込んでいたくらいだから、ああ情けなや。
新創なったばかりの、隈研吾設計による美術館はまぶしいくらいで、近代的ながら和を感じさせる空間に踏み込むと、とても清々しい気分になった。
俵屋宗達工房を示す「伊年」印のある《四季草花図屏風》に始まる屏風の空間は、屏風好きには堪らない展開。
続く「伊年」印《夏秋草図屏風》は、金地でないこと、余白が多いことから、ややさっぱりし過ぎの印象がないでもないが、墨で描かれた草花の端正な描写と、屏風全体に流れるようなリズム感が心地いい。
《桜下蹴鞠図屏風》
俵屋宗達工房制作と考えられているとのこと。蹴り上げられた鞠が画面から半分はみ出し、それを見上げる公卿や僧侶らがそれを同じように見上げる動きのある構成といい、左隻で主人を待つ従者たちも一か所により集まっているわやわやした様子といい、宗達派に違いないと思える。構成の絶妙さとユーモラスな雰囲気ににやにやさせられる。
《誰が袖図屏風》
部屋と衣装が融合する空間が緻密に描かれ、きらびやかな景色を作り出している。時代の雰囲気を楽しむ。
尾形光琳《燕子花図屏風》
金地に燕子花だけがリズミカルに音を奏でている。葉のぼってりとした塗り方がいまひとつのように以前は思えたのだけれど、そうする理由があって描いているような気もしてくる。濃淡で花や葉を繊細に描き分けることに関心などなくて、ただ反復が作り出すデザイン空間に潔く集中したとかいったふうに。
右隻と左隻で花の色が違うのはどうしてだろう。若々しさと成熟を表現しているのだろうか。
鈴木其一《夏秋渓流図屏風》
近年その重要性が高まりつつある鈴木其一らしい大胆で奇抜な画面、鮮やかな色。柿の葉などの繊細な描写と岩笹の葉などの徹底して単純化された描写が、果たして融合または調和しているといえるのかどうかはわからないけど、目を奪われるのは確か。あまり濃淡もなく置かれた色はアニメ塗りのようだし、構図もアニメのオープニングやエンディングにみられるような独特の表現で、なんとも面白い。
《燕子花図屏風》以外に何が展示されているか知らないで出かけたので、まさかこんなにすばらしい作品が揃っているなんて。
木漏れ日が気持ちいい庭でひとときの清涼感も味わえて、まさに根津美術館日和だった。これでいい図録があれば言うこと無しだったのだけど。