平安遷都1300年記念「奈良の古寺と仏像 ―會津八一のうたにのせて―」展の記者懇談会なるものに、なぜだかお声掛けいただいたので出席してきた。
記者でもないし、こういう不活発なブログだし、当初は参加するつもりではなかったのだけど、一度こういう場所を見てみたいという興味本位と、青少年時代の一時期を過ごした、大好きな奈良を広めるのに微力ながらお手伝いしたいという意味で、参加を決めた。奈良に住んでいたといっても、古代史や美術に関心を持つようになるのはずっとあとのことで、今から思えばもったいなかったなー。
さて本題。
数日前から仕事が極端に忙しくて、体調も悪くなっていったので、実はぎりぎりまで出席できないかもと覚悟していたが、こういう機会を一度逃してしまうと、二度目がなくなるかもしれないので、どうにかやりくりして行ってみた。
日本橋三越前のアンテナショップ「奈良まほろば館」の2階が会場。40人程度でいっぱいになるくらいのスペース。まわりは記者さんらしき人たちばかりで、なんとなく場違いな気がしたけど。
まずは展覧会の概要を見てみよう。
奈良をこよなく愛した會津八一のならうたにのせて、奈良の仏教美術を堪能してもらおうというこの展覧会。今年4月から12月にかけて、八一のふるさと新潟を皮切りに、東京、奈良の3会場で開催され、合わせて国宝4点を含む奈良の代表的仏像、仏教美術品が出品される。
新潟展(2010.4.24-6.13)の会場は新潟市美術館。
注目は中宮寺の国宝「菩薩半跏像」(伝如意輪観音)。チラシの写真を見ただけで、その柔和な姿と表情にぐっと惹きつけられ、心から見たいと思った。この仏像、奈良・東京以外では初の公開になるのだそうだ。ただしこの特別公開は5.25〜6.6に限られるので注意が必要(混むだろうなー)。
新潟市會津八一記念館では、「生涯と業績をたどる」が同時開催され、八一の書「獨往」などが展示される。
東京展「繊細な造形美集う贅沢な空間」(2010.7.7-9.20)の会場は三井記念美術館。
注目は、悪夢をよい夢に変えるという法隆寺の国宝「観音菩薩立像(夢違観音)」、それに室生寺の国宝「釈迦如来坐像」(これも7.7-7.25の期間限定)。そして、うち二仏が東博と奈良博に寄託されている西大寺の重要文化財「塔本四仏像」が約20年ぶりに並ぶのだそうだ。これもわくわく(平面好きのはずでは?というツッコミはしないように)。
関連企画として、「入江泰吉写真展」(7.7-7.19)が日本橋三越本店で、「小川晴暘没後50周年記念「写真展/祈りのかたち」(7.7-7.25)が日本橋三井タワーで開かれる。
奈良展「天界の至宝再発見、あふれる情熱」(11.20-12.19)の会場は奈良県立美術館。
こちらは奈良にあって「奈良の古寺から仏像をお借りするわけにはいかない」とのことで、「古寺・仏の美、うたい 写す」[八一ゆかりの作品で大和に誘う]と相成った。「ならうた」歌書・歌碑の拓本、東大寺龍松院蔵の拓本群、仏像写真家たちの名作などが展示される。
懇談会には、展覧会を監修した鷲塚泰光 前奈良国立博物館館長、大橋一章 早稲田大学會津八一記念博物館館長、神林恒道 新潟市會津八一記念館館長、清水眞澄 三井記念美術館館長が出席、それぞれがみどころを紹介、いろいろと興味深い話があった。
3会場で開かれるけども、いわゆる巡回展というよりはむしろ3部構成と考えるべきだという見方。確かにそれぞれにはっきりした特色があるので、すべてをみて、ようやく全貌が見えてくるかもしれないと納得。
如意輪観音の新潟での公開は、地震からの復興への願いが込められているそうだ。その他も含めて貴重な仏像たちの奈良からの持ち出しに尽力されたらしい鷲塚氏がそう語った。
仏像が専門の清水氏は、仏像といってもいろいろなものがあり、材質や形態の違いにも注意して見てほしいというようなことを述べていた。見せる側としては、彫刻として仏像を見せることになるが、仏像として見るか仏教美術品として見るかは見る人の気持ち次第ではないかとも。
ところで、僕は會津八一と聞いても、たしか歌人だったなというくらいの認識しかなかった。神林氏によると、八一は新潟の名誉市民第1号で、新潟では知らない人はいないという。では八一とは何者か。歌人、美術史家、書家と八一がどう結びつくのか。
27歳で初めて奈良を訪れた會津八一は、奈良に惚れ込み、生涯にわたって何十回も訪れることになった。
奈良で感動し奈良に惚れ込んだ八一は、東洋美術史を研究し、感動を歌に詠み、それを自らしたためたいと望んだ。すべてが愛する奈良へのオマージュであったというのだ。
奈良を愛した會津八一の歌にのせて仏教美術品を紹介する。平城遷都1300年という機会を捉えて奈良を知ってもらいたいという主催者たちの願いがこもっている、そういう展覧会になりそうだ。
僕は奈良を離れてから奈良をさらに強く想うようになった。僕の心のふるさと奈良。その奈良を熱心に愛し、紹介したいと願う人々をうらやましいと感じながら、この拙い紹介文でほんの少しでもこの展覧会に出かけてみたいと思う人がいたら、少しは貢献できたと信じよう。
最後に、スペシャルゲスト登場!
やっぱ、せんとくんでしょう。