国立新美術館で企画展「
THEハプスブルク 華麗なる王家と美の巨匠たち」をみた。"THEハプスブルク"なんてシンプルなタイトルを付けるところに、これぞハプスブルクだ!といった自信のようなものを感じさせる。
ハプスブルク家の肖像画
展覧会の顔のひとつ、
フランツ・クサファー・ヴィンターハルター《オーストリア皇妃エリザベート》の美しさと華麗さもすばらしかったが、少女マリア・テレジアの大人びた眼差しに目を奪われた。
アンドレアス・メラー《11歳の女帝マリア・テレジア》(1727)
この作品名だと、この時点でもう女帝であるかのように勘違いしてしまわないかな。ちょっと山猫を思わせる、きりりとした気品ある姿が魅力的だ。
イタリア絵画
ジョルジョーネ、ティツィアーノ、ティントレット、ジョルダーノ、ティエポロなどの著名な作家の名前が並ぶ。
ドイツ絵画
アルブレヒト・デューラー、ルーカス・クラナッハ(父)など。
ルーカス・クラナッハ(父)《洗礼者ヨハネの首を持つサロメ》(1515)
サロメの衣装と背景の青の配色が見事な美しさ。サロメの官能的で冷徹な表情ときらびやかな衣装が、この残酷な場面に目を向けさせる。切られた首の断面は描かなくてもいいと思うのだが。
スペイン絵画
ベラスケス、エル・グレコ、スルバラン、ゴヤ、ムリーリョ・・・ワォ!この部屋だけで満足だー。
ディエゴ・ベラスケス《白衣の王女マルガリータ・テレサ》(1656頃)
王女マルガリータの肖像画をみると、複雑な気分にはなるが、歴史上もっともすばらしい画家のひとり、ベラスケスの手になる絵のすばらしさは言うまでもないだろう。
王女の姿と背景の明暗の処理が絶妙。高そうなドレスの光具合を、適当な筆さばきで描いた白い絵具の置き方には、相変わらずびっくりさせられる。
バルトロメ・エステバン・ムリーリョ《悪魔を奈落に突き落とす大天使ミカエル》(1665-68頃)
どうやらミカエルはカトリック、悪魔はプロテスタントを表しているらしい。美しき大天使の白い肌の周辺に配置された赤が画面をミカエルを浮かび上がらせているよう。
フランドル・オランダ絵画
ここでは、ルーベンスの大作とヴァン・ダイクの黒い衣装の肖像画たちが目をひく。
ペーテル・パウル・ルーベンス《悔悛のマグダラのマリアと姉マルタ》(1620頃)のマグダラのマリアは本当に悔悛しているの?という気がするけど。お姉さんがいたんだね。
レンブラント・ファン・レイン《読書する画家の息子ティトゥス・ファン・レイン》(1665頃)は、心憎い光の演出が冴える小品だ。
さすがTHEハプスブルク。これでもほんの一部なんだろうから、栄華のほどは計り知れない。
が、プラド美術館には絶対に行きたい――というお門違いの感想で締めくくることにする。