講談社野間記念館で
「近代日本の花鳥画〜花と鳥の肖像〜」をみた。
週末に絵をみに行ったのはずいぶん久しぶりのような気がする。朝から曇り空で、下り坂の予報、到着したときにはもうポツリときはじめていたけど、気分は晴れ。
はじめて出会う作品も楽しみだし、荒木十畝《黄昏》、速水御舟《朱華瑠璃鳥》、西村五雲《夏木立》などのお馴染みの作品もまた楽しみ。
いきなり今日いちばんの作品というのもなんだけど、順路の最初の作品だったから。
荒木十畝《梅に烏》
薄く描かれた梅の姿に味わいがあって、そこにとまった烏のまるっとした存在感と生命力溢れる姿にやられてしまった。実を言うと梅のことはよくみなかったかもしれない。それだけ烏に魅きつけられてしまったからだ。墨の濃淡でこんなにも力強い鳥の姿を描けるのだなとただ感心するばかりだった(自分もこういうふうに描けたらなー、なんて大それたことは考えていませんよ、あしからず)。
速水御舟《菊花》
これまた菊の花の姿にやられてしまった。ひょろりんとうごめくような黄色の花弁、そしてさららと広がる白の花弁の形態の美しさ。そこだけみても御舟の非凡な感性と技術が表れているようだけど、菊と蜻蛉の色と構図はまさに完成された美しさをもっていると思う。
このほか、歴史画で知られる安田靫彦の花鳥画《春雨》、徳岡神泉《鶉図》などが印象に残った。
ここでの楽しみのひとつである十二ヶ月図色紙。
今回展示されていたのは宇田荻邨、金島霊華、荒木十畝、木村武山、堂本印象、小茂田青樹福田平八郎、上村松篁、徳岡神泉。
いちばん好きな画家のひとり、福田平八郎の十二ヶ月図がやはり最高なんだけど、それ以外に金島霊華のそれもかなり気に入った。なんともつるっとした描き方に徹しているところが好みなのかもしれない。ついでにいうと、平八郎の落款署名はとても絵に合っていて、おもしろみがある。
ひととおり絵をみおわって休憩室に行くと、ガラスの向こうに広がる庭はしっとりと濡れていて、よく見ると結構本降りになっていた。訪れたことがあればわかると思うけど、この雰囲気がまたたまらない。こういう天気のせいか空いていて静かだったということもあって、雨なのにとてもいい気分。きっとアルファ波みたいなリラックスした脳波になっていたに違いない。
とにかく久しぶりにゆっくり絵をみて、雨関係なしの充実した一日だった。