エフゲニー・キーシン ピアノ・リサイタルを聴きに行ってきた。
実は今月はキーシン月間で、横浜から始まって、全部で5回も通った。そのせいで美術展はお休み状態になったけど。
まずはプログラム。
セルゲイ・プロコフィエフ
バレエ「ロメオとジュリエット」からの10の小品 Op.75より
少女ジュリエット、マキューシオ、モンタギュー家とキャピュレット家
ピアノ・ソナタ第8番 変ロ長調 Op.84「戦争ソナタ」
フレデリック・ショパン
ポロネーズ第7番 変イ長調 Op.61「幻想ポロネーズ」
マズルカ Op.30-4、Op41-4、Op.59-1
12の練習曲 Op.10より
第1番 ハ長調
第2番 イ短調
第3番 ホ長調「別れの曲」
第4番 嬰ハ短調
第12番 ハ短調「革命」
12の練習曲 Op.25より
第5番 ホ短調
第6番 嬰ト短調
第11番 イ短調「木枯らし」
なかなか心憎いプログラムだ。前半のプロコフィエフでこの作曲家の独自の魅力を緩急自在の柔らかさと力強さでみせ、後半のショパンで美しい旋律ときらびやかさをみせる。
「戦争ソナタ」のような長いソナタから、「別れの曲」のようなポピュラーな曲まで、それぞれ新鮮な喜びを与えてくれる。
神童のままで終わることなく、確実に巨匠への道を歩み続けるキーシン。次の来日も3年くらい先になるのか、ぜひさらなる成長と意欲的なプログラムを期待するよ。
そしてアンコール。
ショパン:ワルツ 第7番 嬰ハ短調Op.64-2
プロコフィエフ:歌劇「3つのオレンジへの恋」より行進曲
ショパン:幻想即興曲 嬰ハ短調Op.66
プロコフィエフ:4つの小品Op.4より 悪魔的暗示
ショパン:マズルカ 第40番 ヘ短調Op.63-2
ショパン:ワルツ 第6番 変ニ長調「子犬」Op.64-1
ショパン:マズルカ 第41番 ホ短調
ショパン:ワルツ 第14番 ホ短調
モーツァルト:ピアノ・ソナタ 第11番 イ長調より第3楽章 トルコ行進曲
ブラームス:ワルツ集より変イ長調 Op.39-15
本来のプログラムだけでも十分満足できる質と量なのに、アンコールがなんと10曲。
このうち、幻想即興曲と悪魔的暗示は、それこそ悪魔的なほどに魅力的で圧巻だった。それをアンコールで聴けるなんて、なんと幸せなことか。
アンコールは横浜では5曲だった。それがだんだんと増えていった。サントリーホールでの2回目(22日)から、アンコールの曲と順序の入れ替えがあった。それで全体の構成がさらによくなったせいか、会場の雰囲気がよくて、それがキーシンに伝わったのか、ものすごい熱狂になった。
ところが最終回もそれに負けないものだった。演奏は今回のツアーでたぶん一番、席もよかったのだろうけど、音の美しさも最高だった。日曜日の19時開始、終わったのが22時を過ぎていたけど、ほとんどの聴衆はいつまでも聴いていたいと願ったに違いない。ただ花束や贈り物がちょっと多すぎるかな。それと、ただ声を張り上げたいだけのブラボーも残念だった。そんなブラボーなら、海に向かってやってくれ。
キーシン来日のときは、だいたい何回も聴きに行くのだけど、なぜか横浜では、拍手を揃えて先導する人たちがいるせいで、雰囲気がこわれてしまう。アンコールがキーシンにしては少なく終わってしまう原因はそのあたりにあると思うのだけど。
せっかくすばらしい音楽を聴いて愉しい気分になりたいのだから、会場の雰囲気をみんなでよくしませんか。そうして、みんなが一体になったとき、さらにすばらしい瞬間に遭遇できそうな気がするから。