東京国立博物館で開催中の
「大琳派展」をみてきた。
展示替えスケジュールで全6期だとすると、前回が第1期で、今回は第3期にあたる。
前回感想は
こちら。風神雷神図屏風については
こちら。
都内ではいろいろ美術展が開かれている。で、今いちばん行きたい展覧会はどこだろうと考えたところ、やはり大琳派展だった。俵屋宗達の《風神雷神図屏風》が展示される28日以降にもできれば出かけたい。
前回触れなかった作品と今期登場の作品を中心に。
俵屋宗達下絵・本阿弥光悦筆《鶴下絵三十六歌仙和歌巻》
「対決ー巨匠たちの日本美術」展でみたときから、鶴がリズミカルに飛翔する姿の絶妙な美しさに参っている。今回、ちょうどこの部分をじっくりと眺めてみて、その迷いない筆さばきに、宗達が大胆に筆を走らせる様子が目に浮かんできた。
これは2週間毎に巻替。
俵屋宗達下絵・本阿弥光悦筆《鹿下絵新古今集和歌巻断簡》(五島美術館)
2期まで展示されていた山種美術館所蔵のものと合わせてみてみると、とくに空間の表現に工夫が感じられておもしろい。
俵屋宗達《墨梅図》
なんだろう、この構図は。画面をほぼ左右半分に切り分けるように真っすぐに伸びた枝。解説によると定規を用いたとみられているようだが。
ここまで大胆だとかえって気持ちがいい。梅の蕾もかわいい。
尾形光琳《佐野のわたり蒔絵硯箱》
藤原定家「駒止めて袖打ちはらふかげもなし さののわたりの雪の夕暮れ」(新古今和歌集)
きらきらと水が流れる川を前に、人と馬のからだと心の動きの一瞬を見事に切り取っている。きらめきがあってすばらしい。
尾形光琳《四季草花図》
墨に淡く色をのせた雰囲気がなかなかいいと思いながら近づいてみてみると、墨で線がはっきりと描かれていてとてもおもしろく感じた。その線がまたなんとも味わいがあってきれいだ。
酒井抱一《燕子花図屏風》
燕子花の群青の抑えた色合いが背景と合って深い味わい。水の感じを含めて情景がよく伝わってくる。
少しの白い花、それになんといっても蜻蛉がいることで情景に広がりが生まれ、詩情が高められているように感じる。
酒井抱一《十二ヶ月花鳥図》米国ファインバーグ・コレクション
抱一得意の十二ヶ月花鳥図。それぞれに特徴があって変化に富んでいる。この画像にあるのは七月。蛙のちょっこりと乗った姿がポイント。
毎日みたいような作品が目白押しで、今回もわくわくさせられた。日曜日の午後、相当の混雑を覚悟していたけど、想像ほどではなくてほっとした。
俵屋宗達《風神雷神図屏風》が展示される場所がぽっかりと空いていて、やはり風神雷神勢揃いを見逃すわけにはいかないなと強く思う。
前回は時間がなくて本館日本ギャラリーをみることができなかった。今回は時間があったので、めぐってみると、第8室「書画の展開」には、
俵屋宗達《西行物語絵巻(渡辺家本)》(巻上)などが展示されていて、
隠れ琳派展になっていた。ここも合わせてみると、さらに幸せな気分になれること間違いなし。
特集陳列「キリシタンー大航海時代のキリシタン遺物」も、十字架、板踏絵など、ポルトガル船でやってきた、または日本でつくられたキリシタンの遺物が集められた、なかなか興味深い展示だった。
ついでに小ネタを2つ。
一つ目。
大琳派展のポストカード売り場に来て「これは光琳と宗悦ですね!?」と訊いている中年女性がいた。宗悦?・・・まさに宗達と光悦のコラボ!
二つ目。
平成館を出てきたもう少し年配の女性ふたり。
表慶館に目を向けて「あれはニコライ堂?」「違う!」
こういうのをけんもほろろと言うんだろうな。