山種美術館で
「日本画満開〜牡丹・菖蒲・紫陽花・芥子〜」をみた。
もう梅雨明けしているに違いないと感じるほどの好天と暑さとなっては、これらの花々の見頃の時期はほとんど過ぎてしまっているけど、日本画に描かれた花々は満開だった。
小林古径《菖蒲》
《菖蒲下絵》と並んでいたので、み比べてみると、本画になるとまったく印象が変わっていた。
花の色そのものもかなり変えているし、濃淡もはっきり。全体に落ち着いたバランスになっているのに、画面が引き締まっていて、空気感が全然違うものになっていた。葉の密度が濃くなったせいもあるだろう。
小林古径《牡丹》
花の白と葉の緑がはっきりと分けられていて、爽やかな初夏の香りがした。
小林古径《鉢花》
盛鉢と紅白のチューリップの取り合わせがまずおもしろい。楽しげな小気味よさ。
小林古径《蓮》
涼しげなピンクの花と波打つ葉が響き合ってリズミカル。
小林古径《白華小禽》
ピンクを薄くのせた泰山木の白い花と緑の葉に、瑠璃色の小鳥と雌しべの赤がさりげなくポイントになっていて、はっとさせられる美しさ。
今回は個人的には
小林古径大会になってしまった。もちろん、このほかもすばらしい作品ばかり。
松尾敏男《彩苑》
雨に打たれて垂れる菖蒲。葉と茎が水面にまっすぐに切られているところが不思議な味わい。
高山辰雄《緑の影》
タイトルにあるとおり、全体がほぼ緑で覆われ、紫陽花の花にだけ青みなどが入れられている。「作家のことば」にある「花弁が薄く、そのせいで、少し真珠色に光って見えた」という紫陽花を描いたもの。
川端龍子《華曲》
唐獅子牡丹を描いた二曲一双屏風。右隻の牡丹は葉や茎が墨で黒く描かれ、「花王」に相応しい貫禄。左隻の蝶とじゃれ合う獅子は、おかしな格好ながら、しなやかな動きをみせている。
奥村土牛《蓮》
毎日写生していたわりには蓮の花が少ないなと思いながら、下がってみてみると、あの世に咲く花のように幻想的な雰囲気をたたえていた。黒い額縁のせいで薄型テレビでハイビジョン画像をみているようだった。
速水御舟の作品は
《牡丹花(墨牡丹)》など、すばらしい絵がいつものように展示されていたが、以前にいくつか触れている。
《牡丹(写生画帖)》のスケッチには圧倒された。多分じっくりと眺めてから、すらすらと描いたのだろうなどと思いながらみた。
季節を感じながら花の絵を、いろいろな表現で描かれているのをみるというのは、華やかで贅沢な気分だった。日本画ってまずは花鳥風月だなーと思わせてくれる。