講談社野間記念館で
「竹内栖鳳と京都画壇」(5月24日-7月21日)をみた。
竹内栖鳳をはじめ、京都画壇の精鋭たちが描き出した、美世界。
近代日本画壇の一大勢力の画業を、野間コレクションから選び抜きました。
竹内栖鳳《古城枩翠》(1926)
詩情あふれる作品だなとは思いながらさらっとみて、通過。第1室を一通りみおえて出口に向かおうとして、遠目からこの絵の青色が目に飛び込んできた。雲のように濠へと迫り出した松を取り囲むように置かれた空や水の青が、薄いながら鮮烈にみえた。
堂本印象《清亮》(1932)
鳥たちと花が絵の下方に寄り集まって描かれているけど、それがかえって華やかさを高めている。
西村五雲《夏木立》(1936)
独特の筆致で、枯れた印象。木菟の姿がまるで猫のようでおもしろい。
徳岡神泉《鶉図》(1935)
「じっとりした地面の様子を薄墨で表現」とある。本当に薄い墨で水を含んだ土が見事に描かれている。そこに立つ愛らしい鶉と伸びやかな木賊(トクサ)。トクサは山間の湿地に自生するという。
福田平八郎《雙鶴図》(昭和初期)
この作家らしい、デザイン画風のきっちりと端正な表現がとても好きだ。「単純化」することが装飾性を生んでいるように思う。
土田麦僊《春》(1920)
四面の大作に花が咲き誇る作品。右が椿の大樹、左が白木蓮、そして中央が梨の花だという。「梨」の季語は秋だけど、「梨の花」になると春。こんなに美しい花だとはまったく知らなかった。なんの根拠もないけどウィリアム・モリスのデザインを思い出した。
花の白や赤、草や葉の緑が画面全体を覆い、春の息吹を強烈に感じさせる。でも人物はちょっと・・・。
上村松園「十二ヶ月図」(1927)
松園の場合、十二ヶ月図でもやはり人物がメインか。個人的には、掛け軸なんかの大きな絵より、色紙という小さな世界にさりげなく描かれる人物のほうが、細かさではなく、姿態が前面に出てくるせいか、ずっと好きだ。
竹内栖鳳《勢幾禮以》(1923)
水辺に佇む鳥をみて初めて「セキレイ」と読むのだと気づいた。
《鮮魚》(1933)も桜色のグジがまさに新鮮そうで食欲がわいた。
「十二ヶ月図」ばかり展示している第4室。山口華楊、上村松篁、福田平八郎、堂本印象、徳岡神泉、榊原紫峰、西村五雲の7作品。とくに気に入ったのは次のふたり。とくに色紙という媒体のせいかもしれないが、はっきりすっきり描かれたものが好み。
山口華楊「十二ヶ月図」(1928)
単純化されたデザイン風だが、装飾性がある。
《二月、八重椿》の美しさや、《十月、柿に栗》の栗やイガの愛らしさがたまらない。
福田平八郎「十二ヶ月図」(1930)
山口華楊同様にデザイン的だが、さらにシンプルでおもしろい。
なんといっても鳥たちやカエルの可愛らしさは抜群だ。
野間の十二ヶ月図コレクションはすごい。全部で五千点もあるというのだから、初心者としてはこの先、ずっと楽しめそうでうれしい。
最後に、休憩室から誰もいないテラスに出ると、雨上がりの草や花のかおりがあたりを包み、鳥の鳴き声、しずくの垂れる音が聞こえてきて、すばらしくほっとするひとときを味わった。
残念ながら、その後にやって来た人のたばこのにおいが迫って来たので、早々に退散するはめになったけども。
前回の「横山大観と再興院展の仲間たち」と今回でスタンプが2個たまったので、次回は無料で入れる。「川合玉堂とその門下」(9月6日-10月26日)を楽しみにしよう。