松下電工汐留ミュージアムで「開館5周年 ルオー没後50年 特別展
ルオーとマティス」をみた。
パリ国立美術学校ギュスターヴ・モロー教室で出会い、生涯にわたって友情を交わしたふたりの作家の軌跡を追った展覧会。
「ギュスターヴ・モローのアトリエ」と題された最初の部屋。師弟の作品がともに展示され、なんとなくアトリエの雰囲気。モローの作品が《ナルキッソス》など5点展示されているので、得した気分。
弟子たちの作品には師の影響が感じられ、まだ将来を予感させるほどではない。けど、ルオーの作品には静謐な雰囲気、マティスの作品には色への注目がみられる。
ジョルジュ・ルオー《人物のいる風景》(1897)
青い静かな風景のなかに小さく数人の人が描かれ、詩情あふれる穏やかさ。この後の作風を知っているだけに、初期のルオーはこういう絵を描いていたのかと意外に思う。
続いて裸婦の習作など。
作品が結構似ていたりするので、いちいちどちらの作品か確認する。
その後、ルオーが宗教的風景を描きはじめ、いち早く自分の作風を確立しつつあるようにみえた。ルオーは最初から水彩、パステル、油彩、墨などをいっしょに使うことに興味があったようで、研究熱心だったのだろうと思う。
ルオーの場合、ここまで圧倒的に紙に描かれた作品が多くて、当然、厚塗りでなく、個人的にはずっと好みだ。
サーカスという画家たちが好んで描いたテーマ。
ルオーの版画集「流れる星のサーカス」とマティスの版画集「ジャズ」。同じようにサーカスでくくってしまうわけにはいかないけど、やはり関心のありどころが全然違う。
ルオーが描くキリスト教的風景。出光美術館やブリヂストン美術館でみられる厚塗りの顔の絵とは違って、キリスト教的世界を描いた風景。
ジョルジュ・ルオー《キリストの洗礼》(1911)
深みのある青が印象的な作品。とてもきれい。
最後は雑誌などに掲載された作品。
アンリ・マティス《肘掛け椅子のオダリスク》(1928)
最後にこの絵を描いたときだろう、モデルを前にしたマティスのモノクロ写真が展示されているので、写真をみて、もう一度作品をみに戻った。わりと落ち着いた色の構成で結構好み。単に青が好きなだけかもしれないけど。
ジョルジュ・ルオー《青い背景の花束》(1940-48)
花束といっても花瓶と花。近くにステンドグラスの《花束》があって、これがまた美しいのだけど、この作品は油彩画だけどステンドグラスのような美しさ。色の絡み合いが鮮やかで、ルドンのパステル画を思い出した。
それほど期待して出かけたわけではなかったけど、友人でもあったふたりが芸術的に交差するところに視点を置いた、とてもいい企画だった。モロー好きにもうれしい展覧会だ。