ブリヂストン美術館で「コレクションの新地平 20世紀美術の息吹」展をみた。
ブリヂストン美術館が所蔵する20世紀美術コレクションを、戦後から現代まで幅広く紹介する展覧会。
20世紀といってもいろいろあるので、一括りにはできないけど、この展覧会タイトルから思い浮かぶのは、この美術館が所蔵する、なんだかよくわからない現代作品たちだ。なので、どうなんだろうと思いつつ、どうせよくわからないから気楽にみられるという程度の気分で出かけてみた。
まずは、今回は2部屋で構成されている常設展示をみてから、20世紀コレクションに向かう。
ワシリー・カンディンスキー《二本の線》(1940)
この作家の作品からいつも感じる音楽性をもちろん感じたけど、それにミジンコ的世界が加わって、より静かな印象になっている気がする。
これを皮切りに、ピート・モンドリアン《砂丘》、パウル・クレー《島》など、馴染みの作品を眺めながら、だんだんと現代に近づく心づもりをしていく。
フェルナン・レジェ、ジョアン・ミロ、アンリ・ミショー、セルジュ・ポリアコフらの作品が四方の壁に掛かっているのをくるりとみて、意外になじんでしまっていることに気づく。
第6室はベン・シャーン(1898-1969)。
版画集『リルケ「マルテの手記」より一行の詩のために…』からリトグラフが扉絵から始まる12点。温かで独創的な作品たちに魅了される。
《X 少年の日の想い出を》などをみると、少しだけ色の付いた作品てきれいなんだなと思う。
この版画集からは、3月11日から展示替えされて、やはり12点が展示される。
特集といえるほど、17点もの作品が出されていたのがザオ・ウーキー(1921-)。
ザオ・ウーキー《無題》(1980)
画像なしでこのタイトルだと何が何だかわからないけど、最初にガツンと目にとびこんできた作品。紙に墨で風景とおぼしき世界が描かれていて、近景に群生する花、遠景に断崖と雲、その間には海、というふうにみえた。色のついた果てしない世界の広がりがみえる。
ザオ・ウーキー《07.06.85》(1985)
月日年ではなく日月年の順になるようだ。
全体の7割程度を占める深みのある青がきれいな油彩画。はっきりとはしないが、壮大な風景を感じた。
これを含めて日月年や無題などの作品はだいたいが風景にみえるが、当たり前の具体的な風景として描かれていないためか、どれも広がりと深みのようなものが印象として残る。
このほかにもまったく知らなかった多くの画家の作品をみていくうちに、20世紀の地平を垣間みられたような気がしたのだから不思議だ。
とくに戦後から現代という、ちょっと難解なイメージのある作品群に初めて親しみを覚えたといえるくらい、なかなか充実した展覧会だった。そして、作家として、ベン・シャーンとザオ・ウーキーを頭に刻むことができたことが収穫だった。