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2007.10.30 Tuesday

【みる】東近美常設展 下村観山《木の間の秋》ほか

東京国立近代美術館の所蔵作品展「近代日本の美術」(前期)に出かけた。常設展はブレッソン展のとき以来。

常設展のいちばんの楽しみは、初めてみる作品。なかでも、久しぶりの展示というのがこちら。
下村観山《木の間の秋》(1907)
下村観山《木の間の秋》(1907)
第1回文展に出品され、琳派の近代的解釈として評判になったという作品。酒井抱一《夏秋草図屏風》から着想したらしい。たしかに装飾的な美しさがあるのだけど、色の濃淡で遠近感を導いているからか、奥行き感よりは何かちょっともやっとした印象を受ける。で、近寄ると、木々の一本一本が個性的にニュアンスを違えて描き分けられていたり、葉っぱの一枚一枚が端整に描かれ、とてもみごたえがあった。
離れてみるのと、接近してみるのとで、印象がかなり変わった。
こちらが酒井抱一《夏秋草図屏風》<東京国立博物館蔵>
酒井抱一《夏秋草図屏風》

竹内栖鳳《飼われた猿と兎》(1908)
左右で対比されるサルとウサギの性格がしっかりと感じられるほどに生き生きと描かれている。柵や小物を含めて、背景はよりさっぱりと描かれ、主役の動物たちと絶妙なバランスをみせている。
土田麦僊《島の女》(1912)
全体的に淡い色合いのなかで女たちそれぞれにより強い色が配置されて、目を引く。エジプトの壁画のような平面的な表現のせいか、なにやらほんわかとしたユーモアに包まれている。

パウル・クレー《花ひらく木をめぐる抽象》(1925)
パウル・クレー《花ひらく木をめぐる抽象》(1925)
作品をみてもタイトルの意味はよくわからなかった。だけど、色と形の組み合わせが美しくて、心に響いてくる。なんだか妙に穏やかな気持ちになった。ガイドブックを開いてみると、「何かを再現するのではなく、色彩の組み合わせ自体の効果を考えた」とあった。

藤田嗣治《パリ風景》(1918)
フジタをまとめてみたことがないので、こういうモノトーンの風景画を描いていたとは知らなかった。パリのイメージとはまったく違うわびしさや物悲しさが伝わってくる。心象風景だろうか。
梅原龍三郎《狩野川》(1950)
梅原が特集されていた。
ぱっとみてほかの作品とは違うきれいな色を感じて、近寄ると、金が使われきらきらと光っていた。テトランプという水溶性の絵具を使って岩絵具の輝きをだしているという解説があり、なるほどこれは日本画だと納得。とてもきれいな構成だった。

鏑木清方《明治風俗十二ヶ月》(1935)
今回展示されていた9月から12月までの4点は初めてだと思う。どれもすばらしくきれいだったけど、なかでも「12月 夜の雪」は叙情的で美しい。降り積もった雪の上に黒い人力車と車夫と女性客。そこにまだ降る雪がグレーで描かれ、効果を出している。
香月泰男《水鏡》(1942)
深い水の青とそれを覗き込む少年をとらえた、詩情溢れる作品。抽象性が滲み出して幻想性を湛えている。シベリア抑留以前にこういう絵を描いていたことを初めて知ったが、やはり戦争の影を感じずにはいられない。

安田靫彦《黄瀬川の陣》(1940-41)
みるたびに感激する。広い空間によって緊張感のある場面が生み出されている。繊細だけど張りのある美しい線が画面をさらに引き締めている。線の美しさにはとにかく圧倒される。頼朝と義経がまとう鎧の装飾は、模様が組み合わされて全体になるとさらに華麗だ。

写真コーナーは特集:榎倉康二。
さりげない景色やモノを独自の視点でみつけだし、切り取る目がすばらしい。初めてみて、一瞬で魅了された。こういう写真が撮れたらなあと願うけど、絶対に無理。

写真ではほかに、鈴木理策のサント・ヴィクトワール山の写真が5点あった。これがセザンヌが描き続けた山か、と思いながら眺めた。不思議な白い岩山だった。

小企画「天空の美術」
天空をテーマにした絵や写真が集められている。作家それぞれがもつ天空への憧れのようなものが垣間みられて、ちょっとロマンが感じられた。
スティーグリッツの雲の連作《イクィヴァレント》も展示されていた。


みたことのない作品だけゆっくりみて、あとは適当に流そうという気でいつも出かけるが、広いし、日本画、洋画、西洋画と見所満載でつい楽しんでしまい、気がつくといつの間にか結構時間が経過しているのであった。


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