六本木ヒルズの
森美術館で「ル・コルビュジエ展:建築とアート、その創造の軌跡」をみた。初日から大盛況だった。
建築には関心があるが、ル・コルビュジエにとくに関心があるわけではない。なので、彼が画家や彫刻家としての活動を並行してずっと続けていたことなどまったく知らなかった。ル・コルビュジエにとって、建築も都市計画も家具デザインも、絵画や彫刻と同じ創作活動のひとつだったという。この展覧会もそういう視点で構成されているので、模型や設計図、スケッチと同様に絵画や彫刻が並べられている。
ル・コルビュジエはキュビスムの堕落を批判してピュリスムを主張、途中レジェの影響を受けたりしながら変化していったという(ような説明がたぶん書かれていた)。まあ、苦手な絵の種類なので、正直あまりよくみなかった。彫刻も同様。
建築案のスケッチ、模型などはとても楽しかった。好きなので。
実現しなかったプランもたくさんあるが、実現しなかった作品ができていればと思うと、残念という気持ちがもちろんあるが、いまだになんとなくわくわくする。日本で唯一の建物として知られる上野の国立西洋美術館にしても、周辺にいくつかの建物を加えて提案していた。当時の上野がどうだったのか知らないが、実現したところを見てみたかった。
実現していればいちばん面白そうだったのはソビエト・パレス案。模型やスケッチをみたかぎり、かなり構成主義的な作品に思えたが、当然のように落選し、非常に保守的な建物になったらしい。本当に残念。
実在しているものでは、ロンシャンの教会堂。とくに屋根の形状がユニーク。映像で紹介されたものを見てから、もう一度模型を見た。これが扉だったのかと驚く。
実物大に再現された集合住宅マルセイユ・ユニテ・ダビダシオンのメゾネットタイプは見どころだった。細長いスペースに動きやすそうなキッチン、ダイニング、おむつ換え台などがきっちり収まっている。2階に上がると、ボイラー室の扉を棚にするなど、収納に工夫がみられる。子供用シャワー室まであった。成長したらペット用にでもするのだろうか。
連れ合いはモデルルームみたいと喜び、「ここに住みたい!」と言った。ほかにも同じことを言っている人たちがいた。たしかに50年以上前の集合住宅とは思えない。
カップ・マルタンの休暇小屋も再現され、靴を脱いで上がる。ここから海水浴に出て帰らぬ人となったのだから、彼にとってまさに終の棲家となったところだ。
隣のレストランで食事をしていたためキッチンなどが必要なかったということだが、それにしても、かなり狭い。人は人生のうちで、拡散し、やがて収束していくのかもしれない。
ル・コルビュジエがとくに好きというわけではなかった。しかし、これだけの作品を見せられると、彼がさまざまな創作活動に生涯真剣に取り組んでいたことがよくわかり、興味が惹かれる。好きな人にはたまらない展覧会だろう。
とにかく展示も充実しているし、何よりも広い。ちょっと立ち寄ろうというのでは見きれないので、時間に余裕をもって出かけることをおすすめする。
なぜかチケットが東京シティビューと抱き合わせになっていたので、せっかくだから展望台をひと回りした。すぐ近くはよく見えたが、例えば新宿の高層ビル街あたりになると、霞んでいてよく見えなかった。後になって、黄砂が飛来していたことを知った。納得。