上野公園の
東京国立博物館の平常展に行ってきました。
前回からおよそ2カ月ぶり。平成館での特別展「仏像 一木にこめられた祈り」が大盛況だった影響なのでしょう、本館もなかなか盛況でした。
とくに楽しみにしていたのが、特集陳列の『猫』と『写楽』だったので、さっそく本館2階の特別1室『
猫』へ。
歌川国芳をはじめとする江戸期の錦絵が中心で、猫が脇役のものも主役のものもあります。
なかでも、猫を擬人化した国芳の《猫のすゞみ》や《猫あそび》がユーモラスで楽しい錦絵でした。鼠よけの絵として描かれた、そのものずばり《鼠よけの猫》も、猫らしさがとても出ていて気に入りました。
歌川広重の錦絵《名所江戸百景・浅草田圃 酉の町詣》は、名所江戸百景のなかでも大好きな一点です。
猫には情事の寓意などもあったらしく、この絵では、遊女の暗喩らしい。酉の市が開かれている新吉原を、いろいろな小道具で描ききっています。見えない左手では、客が帰った後、遊女がひと息ついていることをうかがわせています。しかもこの猫がまた可愛いのです。
《鳥獣人物戯画巻 甲巻》(模本)もありました。日本最古の漫画ともいわれるだけあって、なんて楽しい絵なんでしょう。とくに甲巻はカエルやウサギが擬人化されていることで有名ですね。猫の様子を隠れて伺う鼠が描かれている場面が開かれていました。
余談ですが、うちに帰って、BS-hiで「
迷宮美術館」をみたら、偶然にも「猫」特集、そして歌川国芳が取り上げられていてびっくりしました。《猫のすゞみ》は、天保の改革で美人画などが禁止されていたおり、猫で美人画を描き、涼しげな情景を団扇にしたという、粋なものだったそうです。
番組で紹介されていた、東海道五十三次の宿場を地口(語呂合わせ)にした《猫飼好五十三匹》(みやうかいこうごじゅうさんびき)も是非みたいものです。
引き続き平常展「
日本美術の流れ」をみていきました。今回の1点だけ挙げれば、住吉具慶《
洛中洛外図巻》です。京都の町や郊外の様子を四季の流れで描いた図巻で、人々の暮らしが隅々まで克明に、生き生きと描かれていて、じっくりみてしまいました。当時の風俗がよくわかるので、勉強にもなります。
10室「浮世絵―人びとの絵姿」では小特集『
写楽』で東洲斎写楽の役者絵を堪能しました。最も特徴が出ているという(うろ覚え)第1期の20点が展示されていました。すべて重要文化財。
写楽のことは知らなくても誰もが知っている《三代目大谷鬼治の奴江戸兵衛》と《市川鰕蔵の竹村定之進》はやはり格別な味わいがあったように思います。緊張感や迫力がありますね。
もうひとつの特集陳列『
東京国立博物館コレクションの保存と修理』もなかなか興味深くみました。こういう修理の仕事は大変そうだけど、きっとやりがいがあるんだろうな、などと考えながら。いろいろな修理があるものですね。
その後、本館1階もさっとみて回りました。
特集陳列『
旅と街道』がおもしろかった。江戸時代の大名の参勤交代の様子や、庶民の旅の様子が描かれたさまざまなものが展示されていました。なかには旅行ガイドブックのようなものまであって、これも楽しめました。十返舎一九『東海道中膝栗毛』もありましたよ。
東博はいろいろな特集展示があって、ちょこちょこと内容が変わるので、いつ行っても楽しめるところがうれしいですね。
最後は
ミュージアムショップ。連れ合いは「はにわバッグ」やポストカードなど、いろいろ買い込んでいました。ここのショップは充実しているので、あっちこっちとみていると、あっという間に時間がたってしまいます。
外に出ると、ちょうど「秋の庭園開放」中だったので、本館北側の庭園をひと回りしました。日が傾いて本館の陰に入っていたため、寒くなったので、レストラン「ラコール」に立ち寄り、軽食とコーヒーで暖をとりました。
今日の上野公園は天気もよく最高でした。集まった人たちもなんだか楽しそうで、私たちもとてもいい気分でした。