きのう土曜日、「
ボストン美術館所蔵 肉筆浮世絵展 江戸の誘惑」をみに、
江戸東京博物館に行ってきました。
ボストン美術館の浮世絵コレクションから約80点の肉筆浮世絵が1世紀ぶりに里帰り公開されています。
「ぐるっとパス2006」でチケットを購入して入場すると、予想通りの大賑わいでした。
第一章 江戸の四季
歌川豊春《向島行楽図》のように、楽しげな行楽の様子など、江戸の風物が描かれた浮世絵が集められています。
鳥居清長《柳下美人図》、葛飾北斎《鏡面美人図》のような、四季が盛り込まれた美人画もいろいろありました。
確認されている肉筆画は少ないとされる清長のこの作品は、とても雰囲気のあるきれいな絵です。一方の北斎には何か独特のものがあって、惹かれます。帯がまるで本物のようにみえました。この絵も含めて肉筆浮世絵全体にいえることですが、とにかく黒が美しくて、版画とは違うことを強く感じました。
第二章 浮世の華
遊里の風俗を描いた展示。花魁、遊女、女郎、芸者といわれても、ぱっと見ではよくわかりませんが、着物の豪華さや柄、簪などでなるほどそうか、と思ったり。
無款(宮川長春)《吉原風俗図屏風》はいろいろな場面がなんか愉快に、絵巻のように描かれていて楽しい。
北斎《鳳凰図屏風》の極彩色の鳳凰は不思議な生き物です。赤と緑が強烈に主張していて、とくに奇妙な尾羽の表現には圧倒されました。
第三章 歌舞礼讃
歌舞伎の絵看板や役者などを描いたもの。
勝川春章《石橋図》は流れのある動きの躍動感が美しい作品でした。
葛飾応為《三曲合奏図》。三人がぎゅっと画面に詰まっている構成に存在感があって、緊張感のある作品です。ちなみに応為は北斎の娘。はっきりと父の影響がみられるということです。
歌川豊国《三代目中村歌右衛門》は風格と存在感に溢れた作品です。目と口が特徴的です。
第四章 古典への憧れ
故事、伝承などに題をとったもの。見立絵も多く展示されています。
北斎《李白観瀑図》も《月下猪図》も縦長を活かした作品。《月下》の解説には、宴席で課題を押し付けられて即興的に描いた絵なために云々・・・とありますが、雰囲気があって、バランスも完璧に思えるのですが。
そして、鳥山石燕《百鬼夜行図巻》。妖怪絵本ですね。いろんな妖怪がいて楽しいのですが、飛頭蛮(ろくろくび)の首が細すぎる!
北斎の提灯絵《龍虎》と《龍蛇》もおもしろい。中に蝋燭を立てて動かしている様子を想像したり。
とにかくこの展覧会はすばらしい(日本に置いといてもらえませんかね、なんて)。なかでも北斎はやはり特別でした。ほかの誰ももっていないものをこの絵師はもっていますね。
連れ合いは、この展覧会をみる前は、写楽の大首絵みたいな絵ばかりだと思っていたらしい。
最後はポストカードを2枚、そして図録を躊躇なく買い求めました(2冊買っている人がいましたが、お土産なんでしょうか)。
ところで、絵をみて回りながらずっと、わが愛読書、都筑道夫「
なめくじ長屋捕物さわぎ」の世界を思い描いていました。次は逆に、今回みた絵を思い描きながら読み直してみたいと思います。