2007.02.20 Tuesday

パリ(4) オルセー美術館

オルセー美術館は、セーヌ川をはさんでルーヴル美術館の対岸に、駅舎の頃からあったであろう存在感を見せていました。
オルセー美術館01
まさかルーヴルと同じ日に訪れるはめになるとは予想だにしていなかったのですが、翌日のストライキ情報が入ったので、行っておくべきだと思ったのです(実際、翌朝出かけてみると、開館が遅れているとの表示。その後開いたのかどうかは知りませんが)。
ルーヴルの後にオルセーなんて厳しそうに思うかもしれませんが、歩いてのんびり景色を眺めたり、写真を撮ったりしながらセーヌ川を渡り終えたころには、すっかりリフレッシュできていました。
でもそのせいで、時間が足りなくて、みられなかったもの、さらには見逃したものに気づいても後の祭り。これまた次回の楽しみにとっておくことにします。

ミレー
ミレー《晩鐘》
《晩鐘》。祈りを捧げる夫婦。とても静かな絵ですが、絵のなかの世界では鐘が鳴っているのですね。遠くに見える塔の鐘が鳴っているのでしょうが、こういう環境では思いのほか大きな音なのかもしれません。上中下3層の色調の違いが印象的です。
ミレー《落穂拾い》
《落穂拾い》。3人の農婦の向こうでたくさんの人が働いていたことにこれまでまったく気づいていませんでした。しっかりと麦を収穫した遠景を明るく、落穂を拾う手前を暗く描いているようです。

クールベ
クールベ《オルナンの埋葬》
クールベの作品の巨大さには驚きました。日本でみたことがあるものは小さな作品ばかりでしたから。
《オルナンの埋葬》は幅7メートル近くもあります。主題に加えて、大きさがさらなる非難の対象になったというのもおかしな話ですね。実際にみると、リアルさよりも幻想的な印象のほうを強く受けました。
クールベ《画家のアトリエ》
《画家のアトリエ》も負けないくらいの大きさ。とても楽しみにしていた絵なのに、その大きさばかりが気になって、今となってはしっかり絵をみたのか自信がありません。画風のリアルさとは裏腹に、寓意に満ち満ちた感じです。

マネ
マネ《オランピア》
最も楽しみにしていた作品のひとつ、《オランピア》。画集などで見慣れていた絵からは、とくに肌の色の冷たさを感じていたのですが、実物からは、肌の色も含めて全体的に温かみが伝わってきました。これは新鮮な驚きでした。黒猫の存在も効いています。
マネ《バルコニー》
《すみれのブーケをつけたベルト・モリゾ》は日本に出かけているので、代わりに同じくモリゾが描かれた《バルコニー》。座っているモリゾは心ここにあらずといった印象。後ろのふたりもおなじような感じで、3人が時間と場所を共有しているようにはみえません(後ろにもうひとり少年がいるのはわかりにくいですけど)。
マネ《笛を吹く少年》
《笛を吹く少年》。平面的だけど立体的なシンプルな絵。黒の際立つ存在感が全体を引き締めています。
マネ《草上の昼食》
《草上の昼食》は《オランピア》とは反対に、冷たくて非現実的な印象。マネはよく、存在するようで存在しない場面を描いているみたいに感じます。

《笛を吹く少年》の前で座って授業を受けていた子どもたちに、《草上の昼食》でも出会いました。《草上の昼食》の横に先生が立ち、座ってみている生徒たちと対話している! 日本では想像できない光景ですよね。小さなときからこういう授業を繰り返しているだろうフランスの子どもたちに羨望をおぼえずにはいられませんでした。
最後列の少女が後ろでみていた連れ合いのほうに振り向いて、声を出さず口の動きだけで「ボンジュール」と言ったそうです。かわいい子どもたちです。

モネ
モネのコレクションもたくさんありました。睡蓮の連作は別の美術館に譲り、ここでは、時代を追って4点を取り上げてみます。
モネ《庭の女たち》
《庭の女たち》1866-67年。画壇にデビューした当時、戸外で描く風景画に人物を取り込もうとした試み。光と影が調和した美しい絵です。モネもこういう絵を描いていたときがあるんだなと感心しました。
モネ《サン・ラザール駅》
《サン・ラザール駅》1877年。活気ある駅の構内が明るい色調で描かれています。煙が白でも黒でも灰色でもなく紫というのは、ガラスからの光が反映されているからなのでしょうか。
モネ《左向きの日傘の女》
《左向きの日傘の女》こと《外光における人物の試み》1886年。《庭の女たち》以来、久しぶりに再開した戸外での人物。といっても、人物は風景の一部で、これが誰であろうかまったく関係ないようにみえます。《右向きの日傘の女》が左に並んでいましたが、比べると左向きのほうが美しいし、完成度が遥かに高い。
モネ《ルーアン大聖堂、大扉とサン・ロマン塔、朝の印象、白のハーモニー》
《ルーアン大聖堂、大扉とサン・ロマン塔、朝の印象、白のハーモニー》1893年。「ルーアン大聖堂」の連作で描かれているのはほぼ同じ場所ですが、時の違いが映し出されています。光のせいでこれほど色が変わってくるのかと驚くと同時に、何よりも空気感をカンバスにとどめようとする執念を感じます。

ドガ
ドガ《オペラ座のオーケストラ》
《オペラ座のオーケストラ》。なんとおもしろい構成でしょう。オーケストラボックスに楽団員をぎっしりと詰め込み、バレエの場面をみせているのですが、現実的にはこういう風にはみえないでしょう。でもそれが濃密な一瞬をみせているようです。マネの黒とドガの黒を一度じっくりと比べてみたい気がします。
ドガ《バレエの授業》
《バレエの授業》。《オペラ座のオーケストラ》同様、遠近感を自在に操っている感じがしますね。教師は小さすぎます。一見自然な姿を描いているようで不自然なところが目につくのは、不自然な感じにすることを画家自身が意図していたためみたいです。
ドガ《浴盤》
入浴や入浴後の裸婦を描いたパステルの連作のひとつ、《浴盤》。モデルは画家にみられているはずだから、画家の目を意識していただろうと想像しますが、それを感じさせないように描くのが画家の力量ということでしょうか。こんな風に裸婦を描くという発想はどこからでてきたのでしょう。

セザンヌ
セザンヌ《りんごとオレンジ》
《りんごとオレンジ》。静物画であって静物画でない静物画。この作品はまるで人物画のようです。配置と配色の見事さにただ魅かれるばかりです。
セザンヌ《たまねぎのある静物》
《たまねぎのある静物》。りんごを腐らせるままにしていたという話のあるセザンヌですけど、たまねぎが腐るのはさすがにちょっと・・・(まさかそれはやってないでしょうね)。

ゴッホ
ゴッホ《自画像》
《自画像》。人物が背景に溶け込んで青系の同じ色でうねっているのが斬新ですね。しかしなんといっても気になるのは、きっちりと引き締めた口元と眼光鋭い目。心の緊張感のようなものが感じられます。
ゴッホ《オーヴェール・シュル・オワーズの教会、後陣》
《オーヴェール・シュル・オワーズの教会》。色そのもの、そして色の配置への強烈なこだわりが感じられます。深みのある濃い色から淡い色まで、全体にもっとも多く使われている青がきれいで、とくに印象に残ります。

ボナール
最後の作品はこちら。
ボナール《白い猫》
《白い猫》。日本の版画から着想を得た作品。たしかにこの猫は浮世絵に出てきそうな猫ですね。おかしな形なのに猫の特徴がよく表現されていて、とても可愛らしい。

これにて終了。
実はとても間抜けなことをしていて、地上階だけはすべてしっかり回ったつもりでいたのに、ドガ、モロー、シャヴァンヌの部屋を見逃したのです(ここで紹介したドガは別の階でみたものです)。なんて馬鹿なことをと思いますが、閉館時間が迫ってきたのでもう確認する余裕がなかったんですね。それに結局はさまざまな理由で叶わなかったのですが、オルセー美術館には、滞在中にもう一度来るつもりだったので。
見残した作品は大きな宿題ということで、またパリに行くというモチベーションにしたいと思います。

オルセー美術館 絵画鑑賞の手引き
最後にミュージアムショップで図録『オルセー美術館 絵画鑑賞の手引き』(17.5ユーロ)を買いました。日本語版です。もちろんポストカードも。

オルセー美術館 帰り

2017.04.29 Saturday

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コメント
実はわたしも一日でルーブルとオルセーと回ったことがあります。走りましたね、館内。(ごめんね藝術よ)
夜間開館日の木曜だからオルセーもゆったり見ましたが、さすがにめまいしましたよ。タクシー代ないことに気づかずタクシーに乗りましたしね。

ボナールの猫は日本にも来た事があります。可愛い奴です。
  • 遊行七恵
  • 2007/02/23 12:43 PM
>遊行七恵さん、こんばんは。

とくにルーブルの最後は朦朧状態でしたから、たしかにごめんと言いたくなります。私もオルセーの狙いは木曜日だったんですが、その日にストですから。
タクシーの窮地をどう切り抜けたか非常に気になりますねー。
  • キリル
  • 2007/02/23 11:34 PM
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