2014.03.02 Sunday

宗達を検証する(9)養源院の襖絵「松岩図」・杉戸絵「白象図ほか」

連続講座「宗達を検証する」第9回 講師:林進
重要文化財 養源院の襖絵「松岩図」・杉戸絵「白象図ほか」―制作の依頼者、趣旨、制作年についてー
2月22日 於:Bunkamura B1特設会場

今回は忘れないうちにさっさと仕上げてしまいましょう。
第9回のテーマは、俵屋宗達の大画面作品である屏風絵・襖絵・杉戸絵の制作時期がいつで制作意図は何なのかということ。山根有三説などと比較しながら検討する。

宗達が法橋に叙位された時期。山根有三は寛永元年(1624)頃(養源院再建のあと)、水尾比呂志は元和元年(1615)前後(嵯峨本料紙の評価)、山川武は元和八年(1622)(養源院再建のあと)、林進は寛永七年(1630)(本朝文粋刊行後)。水尾と林では15年の開きがある。

大画面作品の制作時期を山根有三と林進の説で比較する(講師参考資料を元に管理人が作成)
宗達大画面制作時期

林進説は山根有三が骨子をつくり、受け継がれている宗達研究をいわばちゃぶ台返しするものである(本人談)。山根説は絵の様式を強く意識している。

  • 養源院は淀君が父浅井長政ら浅井一族の菩提を弔うため長政二十一回忌に当たる文禄三年(1594)に豊臣秀吉に頼んで建立、長政の法号養源院を寺号とした。元和元年(1619)に火災により焼失したが同七年、淀君の妹、徳川秀忠夫人(江、崇源院)により再興された。養源院に現存する宗達の襖絵・杉戸絵は宗達研究で最重要なものである。
  • 養源院本堂第五室(室中の間)は襖絵「松岩図」が取り囲むという特異な構成になっている。金地の画面いっぱいに地を這うような松の巨樹を描き、それに呼応する大小の岩を配置する。狩野派のような金碧障壁画と違って、空間の奥行きを表す遠山や池水、金運や土坡のモティーフはない。狩野派は金箔の奥にいろいろ描いて奥行きを表現するが、宗達は金箔の奥に何も描かない。遠景を描かないことで、むしろ手前にあるものを表現する。それは能舞台のように、現実的でないもの、法要を行う場所である室中に永遠性への祈りを込めた。「松岩図」は、潮が引いた浜辺・洲浜を表したもの、つまり宗達が繰り返し描いた無常観がモティーフである。
  • 養源院本堂南廂(西側)の杉戸絵「唐獅子図」二枚のうち左が正面を向くというあまりみられない構図だが、東大寺の金銅八角大燈籠の火袋に見る半肉彫の唐獅子の姿に通じるものがある。これらの裏面の「立つ波に水犀図」は従来麒麟といわれてきたが、水に棲む霊獣の水犀である。南廂(東側)の杉戸絵「白象図」「唐獅子図」も含めて、それぞれ二頭が円環する動きを見せており、これは二曲一双の屏風絵の構図を意識したもので、「風神雷神図屏風」と共通する。「唐獅子」は邪悪なものを防ぐもの、「水犀」は火除け、「白象」は仏をお守りする霊獣を表しており、どれも隙間なく画面いっぱいに描いて、災難や火を通さないことを示している。
  • 山根有三は、養源院再興に際して本堂襖絵を狩野派の絵師が担当したが、何らかの理由で完成に至らず、崇源院と関係があった呉服屋の雁金屋尾形宗柏の推薦により、本阿弥光悦と関係があった宗達が襖絵の制作を行うことになり、この功績により法橋が叙位されたと推察した。
  • 私は、養源院の襖絵と杉戸絵の造形的特徴は寛永十年頃に描かれた増田家本「伊勢物語図色紙」や「風神雷神図屏風」のそれと共通すると考える。崇源院七回忌の寛永九年には東福門院の要請により祖父浅井長政に従二位権中納言が追贈されており、養源院(長政)の追善として東福門院が改めて宗達に襖絵制作を命じたのではないだろうか。

    俵屋宗達_唐獅子図俵屋宗達_立つ波に水犀図俵屋宗達_白象図
今回は養源院再興と襖絵と杉戸絵の制作に迫った。東福門院が浅井長政を追善する目的で宗達に制作を依頼、そのことによって制作年が導かれるという論旨であった。次回の講座最終回、「風神雷神図屏風」と「伊勢物語図色紙」との関係においてさらに深められるのか、期待したい。

なんと、講座に参加して養源院絵葉書セットまでお土産にいただいてしまった。ありがたいことです。養源院は三十三間堂の東向いにあって、宗達の襖絵と杉戸絵が常時公開されているそうなので、三十三間堂観光のついでに訪れてみてはいかがでしょう。

2017.04.29 Saturday

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