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2013.12.31 Tuesday

宗達を検証する(7)重要文化財「西行物語絵巻」の改変

連続講座「宗達を検証する」第7回 講師:林進
重要文化財「西行物語絵巻」(宗達模写、出光美術館)の改変 ―西行往生の場面における「無常」の表象について―
12月14日 於:Bunkamura B1特設会場

『西行物語絵巻』の写本や絵巻を比較しながら、宗達模写の絵巻について、講師曰く「重箱の隅をつつくように」読み解こうという試み。こうやって細かなところを解き明かしていく姿勢が美術史(に限らないだろうが)なのかと、とても興味深く拝聴したので、長くなってしまっていました。

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平安末鎌倉初期の歌人西行の発心、修行、往生を物語化した「西行物語」を絵画化したものが「西行物語絵」であり、写本、絵巻、版本が多数伝わる。
このうち「西行物語絵巻」は、文字でしるした詞書とそれに対応する絵をあわせて数巻の巻物に仕立てた作品。文章の内容によって三系統に分類される。
(1)広本系:物語量が最大のテキスト。出家後の西行がすぐに吉野、熊野、大峰をめぐる旅に出る話で始まる。
‘狙酥術館本と相国寺承天閣美術館本はもとは同じ四、五巻セットの絵巻のうちのそれぞれ一巻で、鎌倉時代(13世紀中頃)の制作と推定(詞書と絵の筆者不明)。
▲汽鵐肇蝓屡術館白描本は南北朝時代の制作と推定。
(2)略本系:出家後の西行がすぐに伊勢に赴く本。
.汽鵐肇蝓屡術館著色本は三巻本で、室町時代(15世紀頃)の制作と推定(詞書と絵の筆者不明)。
(3)采女本系:明応九年(1500年)に三条公敦が詞書を書き、梅田采女佑源相保が絵を描いた絵巻の系統。原本は伝わっておらず、近世の模本がある。
…天擴筏貘∨楔浚本
▲札鵐船絅蝓屡術館本四巻本
出光美術館本・宗達模写本四巻本
づ亙娉繁槝惨本

この出光美術館本は、制作年がわかる宗達の基準作のひとつということで重要。制作由来には、権大納言烏丸光広が越前福井藩主松平忠昌の家老の依頼により、禁裏御文庫に収蔵されている『西行法師行状之絵詞』四巻(采女本)を借りだして、模写本の制作を法橋宗達に命じた、とある。宗達の模写が完成した後、光広が染筆した。寛永七年(1630)のことである。
宗達模写本は松平忠昌から長州藩主毛利家に渡った。現在、四巻のうち第一巻、第二巻、第四巻は出光美術館に所蔵され、第三巻は断簡となって掛幅装に改装され、出光美術館ほかに分蔵されている。
い療亙娉繁椶蓮⊇|の模写と同時に許可を得て俵屋絵師によって模写された「手控え本」で、留めおく目的で素早く簡略に描いたものである。

…天擴筏貘∨椶鉢▲札鵐船絅蝓屡術館本(以下、セ美本)は原本を忠実に模写したものと推定され、づ亙娉繁椶盍蔑化されているものの、同様である。宗達筆の出光美術館本だけが異なる特徴をもっている。渡辺家本がのっぺりと薄いのに対して、宗達筆ははっきりとメリハリ、奥行き感があり、宗達画の特徴に一致する。

出光美術館本第四巻十二段「西行往生」では、原本からの明らかな改変がある。
もっとも重要なのは、西行が阿弥陀如来像に向かって合掌する東山双林寺の室内(阿弥陀堂)が、宗達筆ではすべて畳敷きであるのに対して、セ美本と渡辺家本では阿弥陀如来像が立つ部分が板敷きで、残りが畳となっていること、そして、左側の池のある庭に立つ二本の桜が、セ美本では散りかけた白い花、渡辺家本では花盛りの桜色となっているのに対して、宗達筆では葉桜になっていることだ。

西行物語絵巻
(講座テキストより)

宗達はなぜそのような改変をおこなったのだろう。
西行が葉桜の名残を詠んだ和歌一首「青葉さへ見れば心のとまるかな 散りにし花の名残りを思へば」に即して絵画化し、西行への追善の意を込め、西行の死を描かずに青葉への時間の推移を描いて無常観を表したのではないか。そして室内のほうは、阿弥陀堂ではなく庵室で往生の期を待つ西行のもとに阿弥陀如来が来迎し、畳の上にそっと座られた、と解釈できる。
庵室と庭を同じ時間で描いたのではなく、絵巻の伝統を応用して、右側の庵室の場面から左側の葉桜へと時間の経過を描いて、宗達なりの無常観を表現したのではないだろうか。

絵画の制作は依頼者に向かって行うこともあれば、この場面のように西行(あるいは西行の和歌)に対して描くこともあっただろう。ここで表現した無常観を果たして依頼者がわかっただろうか。

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模写はただ絵を写しとるだけでなく、物語に込められたさまざまなものに寄り添うことで、あらたな可能性がみえてくる、そんな解釈があるのかもしれない。そんなことをつらつらと考えさせられる講義だった。

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