東京都美術館で開催中の
「マウリッツハイス美術館展」に行ってきた。フェルメール《真珠の耳飾りの少女》が12年ぶりに来日して連日の大混雑だというので、比較的空いている夕方を狙って。
この展覧会は東京都美術館の改修後、最初の企画展。
はじめに断っておくと、この展覧会に出かけた目的は《真珠の耳飾りの少女》のみで、その他の作品には期待していなかったし、実際、それ以外はほとんど趣味に合わなかった。
17世紀オランダ・フランドル絵画を成す肖像画、風俗画、静物画のどれも苦手なのだ。
ヨハネス・フェルメール《真珠の耳飾りの少女》
この作品の来日は12年ぶりとかで、その間にフェルメール人気が格段に高まり、誰もが知っている絵になった。
《青いターバンの少女》ともいわれるほど印象的なラピスラズリの青、それに金色が黒い背景に映え、真珠の耳飾りや唇のハイライトがさらに魅力を高める。フェルメールらしい静かな佇まいの作品だが、おそらくこの作品の最大の魅力は異国風の衣装に身を包んだ少女の眼差しだろう。彼女が見える位置のどこへも彼女の強い眼差しは届く。ふとした一瞬の表情なのかもしれないし、何かを訴えているのかもしれない、そんな謎をたたえた眼差しだ。少し開き気味の瑞々しい唇も何かを語っているよう。
小さな絵に凝縮された絵の魅力。近くでじっくり観ることはかなわなかったので、堪能したと言えるかどうかは心許ないが、遠目から彼女の眼差しを受けて満足だった。
レンブラント・ファン・レイン《シメオンの賛歌》
光の魔術師レンブラントらしい明暗のくっきりとした作品で、光のあたった場面は美しく、劇的な効果をあげている。
ペーテル・パウル・ルーベンス《聖母被昇天(下絵)》
アントワープのノートルダム大聖堂にある祭壇画の下絵。下絵というのもはばかられる完成度に脱帽。フランダースの犬のネロ少年もこれを観たのだ。
新しくなった美術館でフェルメールの代表作を観る。ささやかなしあわせを感じるひとときだった。