根津美術館で特別展
「KORIN展「 国宝燕子花図」とメトロポリタン美術館所蔵「八橋図」」をみた。
尾形光琳が十数年の時を隔てて、同じ『伊勢物語』九段にちなんで描いたふたつの金屏風の、およそ100年ぶりの再開の場に居合わすことができた。きっと自分にとっては最初で最後のことになるだろうから、しっかりと目に焼き付けなければと、ほとんどの時間を屏風の前で過ごした。
尾形光琳《燕子花図屏風》と《八橋図屏風》を並べて観比べてみると、想像していたよりもかなり違いを感じる。
燕子花の配置に徹底的にリズムを感じる燕子花図に対して、抽象的な橋で画面を分けて、より構成的に仕上げている八橋図。花も、ぼってりとふくよかでデザイン的な前者に比べて、後者ではより花の形が自然に描かれている。
《燕子花図屏風》には、リズミカルな魅力があるものの、花への色の置き方なんかはどうなんだろう、というふうに感じていたこともあった。今回、この2点を同時にみると、画面の構成だけで官能的ともいえるリズム感を出している燕子花図のすばらしさに、あらためて気づく。
印刷されたもので比べていたときには、橋の存在がゆえに画面に一本芯を通したような力強さを八橋図に感じていたのに、実際にみると、構成しすぎでややうるさい印象をもったのだから不思議だ。色も違う。渋めの燕子花図と明るめの八橋図。
自分は文句なしに燕子花図屏風のほうが好きだと確信できた。みなさんの感想はどうだろうか。
光琳のほかには、弟子の鈴木其一を思わせる色鮮やかさが魅力的な酒井抱一《青楓朱楓図屏風》なども。
日本とアメリカに離れ離れに暮らしている金地の六曲一双屏風を一度にみることができる滅多にない機会。これを見逃すと後悔必至ですぞ。