2008.04.20 Sunday

ヴラマンク展

損保ジャパン東郷青児美術館「没後50年 モーリス・ド・ヴラマンク展」<4月19日-6月29日>をみてきた。

ヴラマンク展01 ヴラマンク展02

本展覧会では最初期から晩年まで、ヴラマンクの作品を一堂に展示し、その画業の変遷をたどります。

I.初期〜フォーヴの時代
あまり知られていないという初期の作品たち。自分なりの画風を確立するためにいろいろと試行錯誤しているよう。それでも、鮮やかな色で塗り分けられた画面構成への感心がうかがわれる。

《製紙場、ナンテール》(1904)
空の青、工場の赤、岩の黄色で構成された3層が調和している。
《ル・アーヴル、港の停泊所》(1907)
船を大胆に手前に配置する構成が力強い。船体のそこここに横向きの色の線と色の対比が目立ち、流れを生んでいる。船の端を大きく切るなど、浮世絵のような構図。
《白い花瓶の花束》(1907)
ほとんど縦の同方向のタッチと色の面が、魅力的な、なんとなく幻想的な空間を作り出している。

II.セザンヌ風作品時代
セザンヌの影響を受けながらも、「セザンヌの自然主義的な側面を重視し抽象絵画に向かうことはなかった」という。
セザンヌ風の構図と地味な色になって、個性が感じられず、あまり魅力を感じない。
とはいえ、《川の上のヨット,シャトゥー》(1909-10)《水辺の風景(大きな帆)》(1909-10)などは、情緒的で美しい。色が鮮やかだったらもっとよかっただろう。

III.スタイルの確立
ヴラマンクを特徴づけるスタイルが確立される。不穏な空や雪の道の景色などが前面に出てきて、穏やかな絵がなくなる。不安がかきたてられるような筆致ということでは、スーティンに通じるものを感じる。
ヴラマンクがもし小説家になっていたら、スティーヴン・キングみたいな作品を書いたのではないだろうか。

《雷雨の日の収穫》(1950)
こわいほどの鮮烈な色と筆致。ずっと変化してきたヴラマンクの行き着いた作風がゴッホと融合したような印象。
「作家が最後に制作した12点の連作グワッシュ《春》によるリトグラフ」(1958)
厚塗りがないせいか、心持ち穏やかな印象を受ける。厚塗りの効果が逆の意味で確認できる。


ヴラマンクの生涯の作風の変化をしっかり感じ取れる、なかなか興味深い企画だった。好みはあるだろうけど、ヴラマンクを俯瞰するには絶好の機会だと思う。
画風は確かに変化していくのだけど、どの時期でも構図がいつも独特で魅力的だったのが驚きだった。ヴラマンクって意外に構図の画家でもあるんだという印象を初めてもった。

2019.09.16 Monday

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コメント
キリルさん、こんにちは!
ご無沙汰しており失礼いたしました…
最近美術館記事をちゃんと書いていなくて><

ヴラマンク展、みごたえがありましたね。
「セザンヌ風」というセクション、セザンヌの亜流、みたいな題名付けしちゃうからそういうふうにみえて魅力の少ないものに見えてしまうけど、もうちょっと別の題名がつけられていれば違った見え方になるんじゃないかなーと思いました。
★はなさん、こんばんは。
今日は怒濤の投稿ですね。

>「セザンヌ風」というセクション、
>もうちょっと別の題名がつけられていれば

するどい指摘ですね。「セザンヌ風」には違いなくても、別の感想をもつ余地が少なくなってしまいますね。すっかり罠にはまってしまいました。

  • キリル
  • 2008/05/14 12:10 AM
キリルさんこんばんは。早速のTBをありがとうございました。

ヴラマンクとキングという例えは確かにしっくりくるものがありますね。不安を掻き立てる晩年の作品はもちろんのこと、回顧展ということで初期作にも見入りました。それにあの自画像も強烈でしたね。なにやらフランケンシュタインに出てくるモンスターのようで…。怖いくらいでした。

>ヴラマンクの行き着いた作風がゴッホと融合

ヴラマンクは当初、ゴッホを父として仰いでいたそうですが、仰るようにスタイルの確立した先でもその影のようなものが出ていたのかもしれませんね。ゴッホとヴラマンクの関係はこれまで意識したことがなかったので興味深かったです。

セザンヌのくだりは私もはなさんのコメントで考え直さないと思いました。再度、次回はセザンヌという文脈なしで見てきたいです。
★はろるどさん、こんばんは。
自画像はなかなか無骨な感じでしたね。ある意味納得しましたけど。
独学だったということぐらいしか知らなかったせいか、ゴッホやセザンヌ、ドランやマティスとのつながりはちょっと意外な気がしました(いろいろな人と交流があったりするのは当たり前なんですけどね)。
>次回はセザンヌという文脈なしで
期待しています!
  • キリル
  • 2008/05/14 10:19 PM
こんばんは
>スーティンに通じるものを感じる。

スーティンは曲がりくねって、ヴラマンクは直線でゴーッッという感じですね。
わたしはスーティンもかなり好きなんです。
なんとなくヴラマンクの絵を見ていると、孤高と言う感じがあります。

ヴラマンクはやっぱり凄い構図を意識的にやってるな、と思います。フツーは合わせちゃいけない色を構図の妙で合わせている・・・そんな風に思います。
  • 遊行七恵
  • 2008/05/15 11:44 PM
★遊行七恵さん、こんばんは。
>ヴラマンクは直線でゴーッッ
いいですねー、ゴーッッ。音も入ってそうですね。
作品自体はそれほどたくさんみていませんが、僕もスーティンには魅かれます。まぎれもなく曲がりくねってますね。
>フツーは合わせちゃいけない色を構図の妙で合わせている
次にみるときには、是非これを頭に入れて眺めてみようと思います。
  • キリル
  • 2008/05/16 12:51 AM
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損保ジャパン美術館にて。 モーリス・ド・ヴラマンク:wikipedia 超個人的な話ですが…「ヴラマンク」とだけ発音すると、あ、知ってるかも、という気になるのですが、「モーリス・ド・ヴラマンク」とフルネームで聞いたとき、最初、東郷青児美術館という場所といい
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「モーリス・ド・ヴァラマンク展」チラシ表・裏 ラ・トゥリリエールの家のアトリエで、収集していたアフリカ彫刻に囲まれたヴァラマンク 1935年頃 後ろは「オーヴェール=スュル=owa-zuの雪」 僕は恥ずかしながらヴァラマンクについては、名前ぐら
  • とんとん・にっき
  • 2008/06/11 5:46 AM

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