「萩尾望都SF原画展 宇宙にあそび、異世界にはばたく」をみに、武蔵野市立吉祥寺美術館に行ってきた。
この美術館って開館が2002年2月らしく、ちょくちょく吉祥寺に行っていたころにはまだなかったので、今回が初めてだった。
SFが生活のかなり重要な部分を占めていた十代のころ、当然ながら漫画もSFから入ることが多かった。手塚治虫しかり、松本零士しかり、萩尾望都もそうだった。そしてSF成分が高いことはその後も読み続ける重要な要素だった。
記憶は定かではないけど、萩尾望都のことを知ったのはSFマガジン連載の『百億の昼と千億の夜』。そこで知ったおかげで、『ウは宇宙船のウ』『11人いる!』『銀の三角』『スター・レッド』『マージナル』『バルバラ異界』という傑作に出会えた。
だから自分にとって萩尾望都はSFの人なのだ。だから、代表作のひとつ、『トーマの心臓』やなんかを読んだのはずっとずっと後になってから。だってSFじゃないから。
そんなわけで今回の展覧会はなんと「SF原画展」。上に挙げた作品群の漫画原稿や扉絵、本の表紙絵なんかが集まった、まさにど真ん中なのだ。
展示は『あそび玉』から始まる。このあたりの作品はとくに相方の担当なので、いくつかの作品について解説をきく。
好きさではトップ3に入る『11人いる!』とその続編は少なめでちょっと残念。それにしてもこのタイトル、なんてすばらしいのだろう。これ以外のタイトルは考えられない。アニメ版は最低でしたが。
『スター・レッド』は鮮やかな赤が刺激的。大昔にいとこに貸したまま返ってきていない。
『百億の昼と千億の夜』の美しい阿修羅に続いて、大好きな『ウは宇宙船のウ』。『霧笛』や『宇宙船乗組員』の展示はなかったけど、この作品集は何度読んだかわからない。原作とこれほど相性のいい絵はほかにないと思う。
『銀の三角』はSFマガジンの連載で読んだ。難解で、ない想像力をひたすら絞り出した。そのご単行本でも読んでいるが、やはり難しかった。最後に読んでからだいぶ経っているので、また読んでみよう(というか、展覧会にあったどの作品もまた読みたくなるに決まっている)。
『マージナル』のカラーイラスト群も美しかった。萩尾望都は色の人だと思った。カラー作品は配色が魅力的だし、白黒でも色味が感じられるのだ。
文庫本などのカバーイラストもたくさんあったし、それ以外にも知らないものや、すっかり忘れていたものもあった。『SFファンタジア』や『奇想天外マンガ全集』に掲載されていたものもあって、これらを売ってしまってあらためて後悔している。
萩尾望都の漫画に対する熱い気持ちが充満している会場。もう一回、もう一回と何度も回って去り難かった。できたらもう一度訪ねたい。
本格的なSFを魅力的な絵で紡ぎだす、最高にすばらしいSF作家。個人的にはずっとSFを描いていってほしいけど、どんな漫画でも応援し続けます。