秩父には前々から一度行ってみたいと思っていて、今年あたり行きたいと考えていたところ、TVアニメ
『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』が始まり、これは秩父に行けとのお告げだと確信(そんなわけない)、箱根に行く計画を変更して秩父に決めた。
アニメの舞台を訪ねる聖地巡礼が目的ではないですよ、ないですよ・・・。
書店で探しても秩父のガイドブックってあまりないもので。ではと、ネットで「あの花」聖地巡礼をした人のブログなどを眺めていくらか参考にしたものの、地図ひとつ持たず、ほとんど予備知識ない状態で旅行に臨むことになった。ちなみにツレは友人たちと秩父夜祭に行ったことがあり、その時の人の多さとあまりの寒さが、ある種トラウマになっているとか。
さて旅行当日。
ドイツで決勝戦を戦うなでしこジャパンの試合を見ながら出発の準備。W杯優勝というまたとない歓喜に、旅行も幸先がいいなあとうれしくなった。なでしこたちがワールドカップを掲げる瞬間を確認して家を後にする。
西武池袋駅で特急ちちぶ号に乗り込む。車内で朝食をとったりしているうちに、やがて山と森と川の景色に変わり、しばらくすると秩父のシンボル武甲山の威容が目に入った。感激していると、間もなく列車は西武秩父駅に滑り込んだ。およそ1時間半のあっという間の列車の旅。
改札を出た最初の感想は、何もないんだなあというもの、そしてなんといっても暑い!だった。
秩父は山だから涼しいと思っている人も多いらしいが、盆地だから、夏はすごく暑くて、冬はすごく寒いとは噂に聞いて知っていた。ところが予想以上の暑さ。やや曇り気味ながら気温は高く、湿気が半端なかった。基本歩きなので、相当きつくなりそうな悪寒、いや予感。
西武秩父駅
近くにあった観光案内所がちょうど開いたので、殴り込みをかける。観光マップの目ぼしいものがあるだろうと探したが、これといったものがなくて、どうにか使えそうな「秩父 観光食べ歩きマップ」を頼りにすることにした。
観光案内所内の「あの花」コーナー
秩父では7月23日から「あの花」関連キャンペーンが始まり、マップが配布されるとか。そのマップがあれば助かったのだろうけど、少し早すぎました。
さていよいよ探索開始。秩父鉄道の秩父駅方面に向かっていくことだけは決めていたので、まずは西武秩父駅に隣接する仲見世通りを抜けていく。思っていたよりもしょぼい感じだけど、人が少なかったからそう感じたのかもしれない。
お隣りの駅、御花畑駅の近くまで歩いてふと振り返ると、武甲山が目に入ったので、パチリ。っていうか、パチリなんて音はしない。
そこから少し歩くと、左手の先にお寺が見えたのでそちらへふらふらと行く。正直、休めるところを探し探し行かないと、暑さにからだがやられてしまう、というのもあって。
秩父札所13番 旗下山慈眼寺
この夏、いろいろな涼感グッズが売られているので、秩父に行くのに、水に濡らすだけでひんやり感をキープするタオルを買ってみた。乾いたタオルで汗を拭くより濡れているほうがいいのは確かだけど、それほどのひんやり感もなく、まあこんなもんかという印象。
閑話休題。
このお寺の木の陰でしばし日差しを避けて、水分を補給したりしてから、再び秩父駅を目指す。もちろん、お参りはしましたよ。
街には古い建物がそこここにあって、いろいろゆっくりと見ていきたいところだけど、とにかく暑くて、余裕を持ってのんびり眺めるということがなかなかできない。スーパーがあったらそこに逃げ込んだり、それはそれで楽しいものだけど。
風情のある古そうな建物があったので、なんだろうと見ると、角の部分が、タバコ屋のおばちゃんが、はいよとタバコを売っているようなところだった。で、見上げると、小池煙草店とあった。
これはいいなと少し離れたところから写真を撮ろうと、自動車を気にしながら移動したら、こんな建物が目に留まった。
カフェ・パリー "登録有形文化財"とある。色褪せた食品サンプルにはラーメン、チャーハン、ギョーザなどなど。今ならカフェと名乗ることはない品揃えだ。こういう建物を見るとうれしくなって、汗を流しながら、写真に収める。
そしてまた少し歩くと、いよいよ秩父神社が現れた。秩父はこの秩父神社の門前町でもあるらしい。神社前の道路を挟んだところでは、人々が集まって山車の準備をしていた。このあともあちこちで同じ光景を見かけたので、夏祭りでもあるんだろうなと思っていたら、秩父川瀬祭が翌日から開催されるということだった。
秩父神社
装飾が凝っていて、ひとまわり見学したら、暑くて死にそうになった。ので、涼しそうなところを探したら、社務所の中に喫茶コーナーがあった。地獄にホトケの心境。
喫茶 柞(ははそ)
そこでソフトクリームを食べているうちに、冷房はなかったけども、ようやく暑さがすこし離れてくれた。このソフトクリーム、ひと口食べた瞬間、予想を裏切る濃厚な味わいが一気に広がって、うまかった。これはぜひ、秩父の夏に悲鳴を上げそうなときに味わってもらいたい。
ひと息ついたら元気になった。再度、秩父駅に向かうと、そこからはすぐだった。秩父駅は秩父地域地場産センターと一体になっていた。そこでしばし油を売ってから、ふたたびぶらぶらと外に出た。
近くには明治時代初期の商館を生かしたほっとすぽっと 秩父館という建物があって、「あの花」の拠点らしき空間になっていた。
建物の2階にも上がってみたが、熱がこもっていて早々に撤退するはめに。1階のエアコンにあたりながら、「あの花」絡みの展示などを眺める。
ちょうど「あの花」の新しいガチャポンがそこに登場、少年がうれしそうに回し、「よかったな〜」という大人の男性の声を聞きながら、その場を後にした。
続いて近くの酒蔵に行きかけたところ、大きな橋があるよとツレが言うので、せっかくだから行ってみようということになった。少し雲が出てきたものの暑さは変わらないなか、坂を下ると、大きな橋、下には清流が見えて、釣り人がたくさん。鮎ねらいなのかな。
秩父公園橋
武甲山もよく見える絶景。
橋を往復し終えたあたりで、どうもツレが暑さにやられたらしい。お腹も空いたので、蕎麦屋にでも入ろうと探すと、看板が見つかったのでとぼとぼとそこへ向かうと、この暑いなか、店外で待っている人たちが・・・。
こちらには到底待つ元気がなくて、秩父駅に向かう道に復帰。が、ツレの様子がおかしくなって、顔が真っ赤になり、「やばいかも」というので熱中症かと心配したが、とにかく休めそうなところを探す。どうにか駅の近くの蕎麦屋にもぐり込み、出された冷たいお茶を飲んで、すこし涼んだらツレもなんとか復活してほっとする。
初めての蕎麦屋で食べるのは、基本的にもりそばと決めているが、もりがなかったので、ざるにする。蕎麦の実の粒が入った田舎そば風の手打ちそばが出てきたので、期待感を持って口に運ぶと、もそっ。そばの香りもしない。この時期のそばだからとかではなくて、これはビジュアルに騙された!という感じでがっかりした。ご主人、高校野球中継に夢中になってる場合じゃないよ、と言いたくなった。
もう少しからだを冷やしたかったので、地場産センターに戻り、建物内の茶房レストラン 春夏秋冬に落ち着くことにした。ここは、いい意味で予想を裏切ってくれた。こういう建物内にあるレストランがどういうものか誰もが持つイメージがあると思うけども、店内はきれいだし、接客もよくて、先ほどの蕎麦屋には寄らないで最初からここにすればよかったと思ったほどだ。
こちらでもアイスクリームとコーヒー。コーヒーを頼んだからか、自家製生チョコがサービスで付いてきた。アイスクリームは濃厚でおいしくて、ソフトクリームしかり、この街ではこういう濃厚なのが普通なのか気になった。ツレもすっかりご機嫌になったのと、外に出たらまたあの暑さと格闘するハメになるのかと恐れおののき、レストランにはすっかり長居してしまった。外の暑さをよく知る女性店員さんと秩父の気候についてちょっと会話、ゆっくりしていって下さいとうれしいことを言ってくださる。会計する時には、また涼しい時に来て下さいと団扇をもらった。扇子をもっていたけど、せっかくなのでありがたく頂戴した。
夕方になってきたし、それではもうホテルにチェックインしようということになった。ホテルは高台にあるのでタクシーで行こうかと提案してみたが、タクシーに酔うツレは拒否、歩くことになったのだが、彼女は道の途中で窪みにはまって転倒、心配ばかりかけてくれる。高台への道も長くて、自分は暑さ以外はまったくもって元気だったけど、ツレはやはり死にそうになっていた。
高台のホテルで秩父の街を眺めながら冷たいドリンクをいただき、部屋に落ち着いたら、すぐに温泉に向かった。客もあまりいないようで、男湯に他に客はいなくて、ずいぶんいい気分になった。女湯も他に誰もいなかったそうだ。
風呂でさっぱりしたら、すぐに夕食の時間になり、レストランでも街並みを眺めながら、食事と秩父ビールを1本。エールは大好き。
夕食後、部屋に戻って、再放送中のなでしこジャパンの決勝戦を見ながら眠ってしまう。まあ予想通りだけど。
目が覚めたのは日付が変わった頃。部屋の内風呂に入る。窓から夜景を見ることができて気持ちがいい。で、風呂から出たあとは、本格的に寝る。
翌日は台風が接近していて、朝から予報通りの雨。予想最高気温は前日比マイナス7度の29度。・・・っておい、きのうは36度あったのか。どうりで。
それはそうと2日目の予定。実は夕方までふらふらするつもりだったが、台風の影響がだんだん強くなりそうなので、午後早い目の特急に変更してもらうことに決めた。その矢先、TVニュースで西武秩父〜高麗間が大雨で運転を見合わせていることを知る。これはまずいことになったとは思ったが、いずれ動くだろうとタカをくくる。後で知ったのだが、この区間はもともと水に弱いところだそうだ。
ホテルをチェックアウトして送迎バスで西武秩父へ。まだ不通のまま。雨もそこそこだったので、様子をみることにして、また散歩に出かける。
せっかくなので「あの花」の舞台、定林寺まで歩くことにした。湿気はあるものの、気温がだいぶ低いの過ごしやすく、歩く足取りも軽い。途中、雨の中、夏祭りの準備が着々と進んでいるようで、道路の脇にはたくさんの屋台が設置されようとしていた。台風で見物客が減るだろうけど、実行する側の人たちは誰も元気そうで、なにより楽しそうだった。
札所17番 実正山定林寺
実際に見ると、アニメの舞台ほどの魅力は感じなかった。まわりの雰囲気はなかなかいいが。
と、また雨がぱらついてきて、そろそろ本当にまずいかもと、あわてて引き返すことに。途中にある武甲酒造を見てみたかったので、寄ってみた。こちらも誰も客はいない。お酒を買うと、好きに見て行ってくださいと声をかけてくれたので、いろいろと見学させていただいた。
武甲酒造
雨脚がやや強くなってきたので、お昼だけ食べたら、いよいよ秩父を後にすることに決めた。
前日のリベンジということで、良さ気な蕎麦屋に入ってみた。前日の蕎麦屋よりはよかったが、やはり満足というわけにはいかなかった。
西武秩父駅に向かっていると、札所15番 母巣山少林寺を見つけたので、やはり寄ってみたが、どうということもなかった。
西武秩父に戻ると、運よく、間もなく再開するというので、いちばん早い特急に変更してもらい、それまでコーヒーでも飲むことに。大通りまで歩いていちばん近くにあったミスドでしばし休憩してから、仲見世通りにお土産を買いに行った。
駅に戻ると、ちょうど特急が到着、これで戻れると思ったのも束の間、再び運転見合わせの報せ。
再開を待つか、迂回ルートを取るかの決断を迫られたすえ、雨がましになる可能性は低いと判断、別のルートで池袋を目指すことにして、特急券の払い戻しを受ける。
正直がっかりしたので、ロッカーから取り出したバッグの重さが増したような気がした。
秩父鉄道御花畑駅まで歩き、寄居行きに乗る。ローカルな路線の古い車両に揺られ、長瀞を通過しながら、これはこれで楽しいものだと気分は持ち直す。が、東武東上線に乗り換えて、人が徐々に増えてくるに従ってなんかうんざり、うちにたどり着いたときには疲れがどっと出た。
山に囲まれた美しい秩父。古い趣きのある建物がまだたくさん残っているし、ぜひまた気候のいいときに行ってみたいと思っている。
これから「あの花」関連キャンペーンがいくつか続くらしいので、秩父に出かけるみなさんは、くれぐれも暑さにやられないように十分気をつけてください。
以上、間抜けな小旅行でありました。お粗末。